この記事を書いている人の前提
僕はベンチャー2社(婚活サービス、暗闇フィットネス)で計5年、大手3社(通信、小売、損保)で計7年以上を過ごしてきた。
両方の世界を知っているからこそ断言できる。「ベンチャーか大手か」という問い自体が、あまり意味がない。
大事なのは「今の自分に、どちらの環境が合っているか」だ。
とはいえ、実際に何がどう違うのかを数字とリアルな体験で比較した記事は少ない。だからこの記事では、僕の実体験をベースに、できるだけ具体的に比較する。
年収:同じスキルでも「場所」で2〜3倍変わる
僕のキャリアでの年収推移はこうだ。
| 会社 | 業種 | 年収 | 在籍期間 |
|---|---|---|---|
| 婚活ベンチャー(JASDAQ上場) | Webマーケティング | 410万円 | 3年半 |
| 暗闇フィットネスベンチャー | マーケティング全般 | 450万円 | 1年半 |
| 大手通信会社 | 広告ビジネス | 670万円 | 1年半 |
| 大手小売ホールディングス | DX推進・CRM | 860万円 | 4年9ヶ月 |
| 大手損害保険会社 | デジタルマーケティング | 1,200万円 | 現職 |
ベンチャー時代の410万円と、今の1,200万円。やっていることの本質——デジタルマーケティング——は変わっていない。
変わったのは「居場所」だけだ。
ベンチャーの給与テーブルには限界がある。会社の売上規模がそのまま給与の天井になる。月の広告予算2,000万円の会社で年収1,000万円は物理的に出せない。一方、大手は「その人のスキル」ではなく「そのポジションの等級」で年収が決まる。同じ仕事でも、会社のグレードが違えば年収は2〜3倍変わる。
福利厚生:見えない年収が100万円以上違う
ベンチャー時代に「福利厚生」という概念はほぼなかった。あったのは交通費と社会保険くらいだ。
大手に来て驚いたのは、見えない年収の厚みだ。
| 項目 | ベンチャー(僕の経験) | 大手(僕の経験) |
|---|---|---|
| 住宅補助 | なし | 月3〜5万円 |
| 退職金 | なし | あり(確定拠出年金含む) |
| 家族手当 | なし | 月1〜3万円 |
| 健康診断 | 最低限 | 人間ドック級 |
| 研修制度 | OJTのみ | 外部研修・資格補助 |
| 有給取得 | 取りづらい | 年20日ほぼ消化 |
| 残業管理 | 自己責任 | 厳格(36協定遵守) |
住宅補助だけで年間36〜60万円。退職金の積み立てや健保の充実度を含めると、額面年収に見えない100万円以上が上乗せされている計算になる。
ベンチャー時代の年収410万円と、大手の年収670万円の差は額面で260万円だが、福利厚生を含めると実質400万円近い差があった。
裁量と成長スピード:ベンチャーが圧勝する領域
ここまで読むと「じゃあ最初から大手に行けばいい」と思うかもしれない。でもそうはいかない。
ベンチャーで得たものは、大手では絶対に得られなかった。
婚活ベンチャーの1年目で触れたもの: - 月2,000万円の広告予算の運用 - SNS運用、Webサイト構築、LP制作 - 800万円のプロジェクト(執行役員から直接プレッシャー)
大手通信会社の1年目で触れたもの: - 係長→課長→担当部長→部長→本部長…と何層もある承認プロセス - 誰も教えてくれない社内システムの使い方 - 会議室の取り方ですら「作法」がある世界
ベンチャーでは入社初月からMeta広告を提案して「プロが来ると違うね」と言われた。大手では入社1ヶ月目に会議室の階を間違えて「そんなこともできないのか」と自分が嫌になった。
成長スピードはベンチャーが圧倒的に速い。 ただし「成長」と「年収」は比例しない。これがこの問題の本質だ。
評価制度:ベンチャーは「見えやすい」、大手は「上司次第」
ベンチャーは社長との距離が近い。自分の成果が直接見える。暗闇フィットネスの会社では、広告経由の入会者数がそのまま自分の評価だった。
大手は違う。上司との相性で評価が180度変わる。
僕は大手通信会社で、コロナ禍の在宅勤務中に上司から「お前は何もできない」と言われた。退職時には「次の会社でもうまくいかないんじゃないか」とまで言われた。
その「何もできない」人間が、次の会社では4,000万円のメタバースプロジェクトを企画・リードし、会員1万人超を獲得した。
何が変わったのか?スキルじゃない。上司が変わった。環境が変わった。それだけだ。
じゃあ、どっちに行くべきか?
僕の結論はこうだ。
20代:ベンチャーで「武器」を作れ。 大手にいると、若手のうちは雑務が中心になりがちだ。先に就職した同期に聞いても「若手にはあまり仕事が回ってこない」と言っていた。ベンチャーなら1年目から予算を持てる。この経験は後から絶対に効いてくる。
30代:大手に移って「武器を高く売れ」。 ベンチャーで身につけたスキルは、大手のDX部門や新規事業部で希少価値が高い。ベンチャーで当たり前だった「ゼロから作る力」を持っている人が、大手には驚くほど少ない。
そして重要なのは:一度大手に行っても、またベンチャーに戻れるということ。 キャリアは一方通行じゃない。僕は「ベンチャー→ベンチャー→大手→大手→大手」と来たが、大手で培ったネットワークと実績を持ってベンチャーに戻る選択肢も常にある。
「損得」より「今の自分に必要な環境」で選ぶ
ベンチャーにいて「同期がタクシーで来る結婚式」が辛いなら、場所を変えればいい。大手にいて「承認プロセスで半年潰れる」のが耐えられないなら、場所を変えればいい。
どちらが「得」かではなく、今の自分のフェーズに合った居場所はどこか。
それを見極めるために、まずは自分の市場価値を知ることから始めてほしい。スカウトが届く転職サービスに登録するだけで、「今の自分が、外からどう見えているか」がわかる。それだけで十分、次の一歩になる。
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