「英語ができないから、転職は不利なんじゃないか」。求人サイトを眺めながら、そんな不安を感じたことはないでしょうか。
先に結論を言います。英語ができなくても、転職は十分に成功します。 僕は転職を4回、5社を経験して年収を3.5倍にしてきましたが、その過程で痛感したのは「英語の要否は職種と会社で決まる」という当たり前の事実でした。採用面接官側に座った経験から見ても、英語力で合否が決まる求人は全体の一部です。
ただし、「全員には不要」と「あなたには不要」はイコールではありません。この記事では、英語が必要な求人と不要な求人の構造、煽り文句との付き合い方、そして本当に英語が必要になる人の条件を整理します。
「英語ができない=転職に不利」は半分ウソで半分ホント
まず前提から整理しましょう。転職市場における英語の扱いは、ざっくり言えば次の3パターンに分かれます。
| 求人のタイプ | 英語の扱い | 英語ができない場合の影響 |
|---|---|---|
| 英語必須求人 | 応募要件に明記 | 応募段階で対象外になる |
| 英語歓迎求人 | あれば加点 | 不利だが他の強みで逆転可能 |
| 英語不問求人 | 選考でほぼ問われない | 影響なし |
ポイントは、国内の転職市場では3つ目の「英語不問求人」が依然として多数を占めるということ。営業、企画、人事、経理、国内向けのマーケティングやエンジニアリング。日本企業の国内事業を支えるポジションの多くは、日本語だけで完結します。
一方で、1つ目の「英語必須求人」は入口で弾かれるので、どれだけ実務能力が高くても土俵に上がれません。つまり「不利かどうか」は、あなたがどの求人群を狙うかで決まるわけです。英語ができないこと自体が問題なのではなく、狙う市場とのミスマッチが問題なんですね。
英語が必要な求人・不要な求人の構造
英語が必須になりやすい領域
求人票を数多く見てきた経験から言うと、英語要件がつきやすいのは次のような領域です。
- ▸外資系企業の本社レポートライン:上司や評価者が海外にいるポジション
- ▸海外事業部・貿易・調達:取引相手が海外企業
- ▸グローバル展開中の日系大手の一部部門:海外拠点との連携が日常業務
- ▸外資系クライアントを持つコンサル・代理店:成果物や会議が英語
共通点は「業務の相手が日本語を話さない」こと。逆に言えば、相手が日本人である限り、英語は要件になりにくいんです。
なお、英語使用部署の中途採用でTOEICスコアを要件や参考にする企業の平均は620点というデータがIIBCから公表されています。「ペラペラ」レベルではなく、まず基礎力の証明が求められている、という温度感が読み取れます。詳しくはTOEICは転職で何点から評価される?で掘り下げています。
英語がほぼ不要な領域
一方、次のような領域では英語要件をほぼ見かけません。
- ▸国内顧客向けの営業・カスタマーサクセス
- ▸国内向けサービスの企画・マーケティング
- ▸人事・労務・経理などの管理部門(国内企業)
- ▸国内SIerや事業会社の社内システム部門
僕自身、デジタルマーケティングの仕事を10年やってきて、英語力を選考で厳しく問われた経験はほとんどありません。問われたのは常に「何をやって、どんな数字を出したか」でした。
「これからは全員英語が必要」という煽りにどう向き合うか
煽りの正体は「不安の商品化」
英語学習サービスの広告やSNSでは、「英語ができないと生き残れない」「グローバル時代に英語は必須」といったメッセージが流れてきます。不安になりますよね。
でも冷静に考えてみてください。全員に英語が必要なら、英語不問求人がこれほど大量に存在するはずがない。煽りの多くは、英語学習という商品を売るためのマーケティングメッセージです。僕はマーケティングを生業にしているからこそ、この構造には敏感でいたいと思っています。
翻訳ツールの進化という追い風
さらに言えば、機械翻訳やAIツールの進化で、「読み書きだけなら何とかなる」場面は確実に増えました。海外の資料を読む、英文メールを返す。この程度であれば、英語力ゼロでも業務は回ります。
もちろん、リアルタイムの会議や交渉はツールだけでは厳しい。だからこそ「英語が本当に必要な仕事」と「ツールで代替できる仕事」の線引きが、以前よりはっきりしてきたとも言えます。英語をキャリアにどう位置づけるかは、英語はキャリアの武器になるかで全体像を整理しているので、あわせて読んでみてください。
それでも英語が必要になる人の条件
ここまで「全員には不要」と書いてきましたが、英語が分岐点になる人は確かに存在します。次の条件に当てはまるなら、英語への投資を検討する価値があります。
| 条件 | 理由 |
|---|---|
| 外資系企業への転職を視野に入れている | 応募要件や選考で英語が問われるポジションが多い |
| 年収レンジを一段上げたい | 高年収帯ほど英語要件つき求人の比率が上がる傾向 |
| 今の会社が海外展開を加速している | 社内の昇進・異動要件に英語が入ってくる可能性 |
| 専門性が市場で飽和しつつある | 「専門性×英語」で希少性を作れる |
特に2つ目は重要で、僕が転職活動で求人を見てきた肌感覚でも、年収レンジが上がるほど「英語歓迎」「英語必須」の文字を見かける頻度は増えました。英語そのものが偉いのではなく、高年収ポジションほど海外と接続した仕事が増えるという構造の話です。
逆に言えば、これらに当てはまらないなら、英語学習に使う時間を専門性の強化に回したほうがリターンは大きいと思います。年収を決めるのは英語力よりも「どの市場に身を置くか」。この考え方は年収は居場所で決まるで詳しく書きました。
英語ができないまま転職を成功させる戦略
では、英語に自信がない状態で転職を成功させるには何をすべきか。僕の経験から、優先順位はこうなります。
1. 職務経歴の言語化に全力を注ぐ:実績を数字で語れるように棚卸しする。面接官側を経験して分かりましたが、評価されるのは「何ができて、何を再現できる人か」です 2. 英語不問の求人群で市場価値を測る:まず自分の現在地を知る。エージェント経由で複数社の提示条件を比較すると、英語なしでの上限が見えてきます 3. 求人票の「歓迎要件」は気にしすぎない:歓迎欄の英語は減点要素になりにくい。必須要件さえ満たせば応募して構いません 4. エージェントに英語要件の実態を聞く:求人票に書いてあっても実務ではほぼ使わない、というケースは珍しくない。中の温度感はエージェントが知っています
エージェントの具体的な選び方や使い方は転職エージェントの使い方にまとめています。英語に不安がある人ほど、情報の非対称性を埋めてくれるエージェントの価値は大きいはずです。
面接で「英語はできますか」と聞かれたら
英語不問の求人でも、面接で英語について軽く聞かれることはあります。ここでの答え方を間違えると、不要な減点を招くので触れておきます。
面接官側を経験した立場から言うと、この質問の意図はたいてい「正直さと向上心の確認」です。できないものをできると盛るのは論外として、避けたいのは「英語は全然ダメで……」と必要以上に卑下してしまう答え方。自信のなさだけが印象に残ります。
おすすめは、事実+スタンスのセットで答えること。例えば「現時点で業務で使えるレベルではありません。ただ、御社の業務で必要になる場面があれば、優先度を上げて学ぶつもりです」といった具合です。できないことを認めつつ、学ぶ姿勢を示す。英語不問のポジションなら、これで減点されることはまずありません。
逆に、もし英語力を厳しく問われる面接だったとしたら、それはそのポジションが実は英語必須だったということ。入社後にミスマッチで苦しむより、選考段階で分かったほうがむしろラッキーだと捉えていいと思います。
「後から英語を足す」という選択肢も残しておく
最後に一つ。英語は「今できないから一生諦める」ものではありません。
TOEICで言えば、スコア100点アップには一般に200〜300時間が必要と言われています(諸説あり)。逆算すれば、1日1時間の学習で半年〜1年で100点上がる計算。転職してキャリアの土台を固めてから、次のステップとして英語を足す。この順番でも全然遅くないんです。
目標設定としては、履歴書に書ける目安とされる600点がまず分かりやすい。TOEIC公開テストの平均スコアが約615点なので、600点は「平均的な受験者に並ぶライン」とも言えます。難易度の実際はTOEIC600点の難易度で解説しているので、興味があれば覗いてみてください。
まとめ
- ▸英語ができなくても転職は成功する。国内市場には英語不問求人が多数ある
- ▸英語要件の有無は「業務相手が日本語話者かどうか」でほぼ決まる構造
- ▸「全員に英語が必要」は英語学習サービスのマーケティングメッセージとして割り引いて受け取る
- ▸外資志向・高年収帯狙い・勤務先の海外展開加速など、英語が分岐点になる条件に当てはまるかをまず確認する
- ▸当てはまらないなら、英語より職務経歴の言語化と求人選びの精度に投資したほうがリターンは大きい
- ▸英語は後から足せる。必要になったタイミングで600点を起点に積み上げれば間に合う
英語ができないことを引け目に感じる必要はありません。大事なのは、自分の狙う市場で何が評価されるかを見極めること。そこさえ外さなければ、転職の選択肢は十分に広いと思います。
