「TOEICを受けたけど、このスコアで転職に使えるのかな」「求人票に書いてある点数に届いていないと、応募しても無駄なんだろうか」。転職を考え始めると、自分のTOEICスコアの市場価値が急に気になりだしますよね。
先に結論をお伝えします。転職市場でTOEICが意味を持ち始めるのはおおむね600点から、英語を使う職種なら700点以上が一つの目安です。ただし、スコアはあくまで補助材料。主役は職務経歴です。
僕はデジタルマーケティング業界で10年働きながら4回転職し、大手企業では採用面接官として候補者の履歴書を数多く見てきました。この記事では、その経験をもとに「採用側はTOEICスコアをどう見ているのか」を正直に書いていきます。
結論:「何点から評価されるか」より「何点なら土俵に乗れるか」
まず前提の整理から。TOEIC L&Rは10〜990点満点(リスニング495点+リーディング495点)のテストで、公開テストの全受験者平均スコアは約615点(2024年度・出典:IIBC「TOEIC Program DATA & ANALYSIS 2025」)と公表されています。
つまり600点前後というのは「受験者のちょうど真ん中あたり」。ここが「履歴書に書いてマイナスにならないライン」と言われる理由です。
もう一つ参考になるデータがあります。IIBC(TOEICの運営団体)が企業・団体を対象に行った「英語活用実態調査」によると、英語を使う部署の中途採用でTOEICスコアを要件・参考にする企業の期待スコア平均は620点。意外と低いと感じませんか?
「外資系は800点必須」みたいなイメージが先行しがちですが、実際の求人市場で求められるラインは、思っているより手が届く位置にあります。詳しくは英語はキャリアの武器になるかでも書いていますが、英語の市場価値は「点数の高さ」より「英語が要件になっている求人に応募できるかどうか」で決まる部分が大きいんです。
職種・業界別の目安スコア
採用側の視点と求人票を見てきた経験から、目安を表にまとめました。あくまで僕の体感ベースの整理で、実際の基準は企業により異なります。
| 職種・業界のタイプ | 目安スコア | 評価のされ方 |
|---|---|---|
| 英語を使わない国内職(営業・事務など) | 600点〜 | 加点要素。学習姿勢の証明になる |
| 国内企業の海外部門・海外営業 | 700点〜 | 応募の土俵に乗るライン |
| 外資系企業(日常的に英語を使う) | 800点前後〜 | スコアは前提条件。実務で使えるかが本題 |
| 商社・メーカーのグローバル職 | 700〜800点 | 要件として明記されることが多い |
ポイントは、700点を超えると受験者の上位約3分の1に入るということ。ここから先は「英語ができる人」として求人の選択肢が目に見えて広がります。700点の位置づけについてはTOEIC700点の壁で詳しく解説しているので、あわせてどうぞ。
もう一つ補足すると、同じスコアでも業界によって受け取られ方の温度は違います。たとえばIT・マーケティング業界では、英語要件のない求人でも「海外の最新情報を一次ソースで追える人」は地味に重宝されます。僕のいるデジタルマーケティング領域はまさにそうで、ツールのドキュメントや海外の事例記事を英語のまま読める人とそうでない人では、情報の鮮度に差が出るんですよね。スコアが直接の要件でなくても、英語力が職務経歴の説得力を裏から支えるケースはあります。
逆に、外資系では高スコアでも「で、実際に話せるの?」が必ず問われます。スコアと実務英語のギャップについては外資系に必要な英語力にまとめました。
面接官として見てきた「スコアの扱われ方」
書類選考では「足切り」と「目に留まるきっかけ」
書類選考の現場で、TOEICスコアが効くのは主に2つの場面です。
一つ目は足切りの回避。求人要件に「TOEIC700点以上歓迎」とある場合、書いていなければその時点で候補から漏れる可能性があります。逆に要件を満たしていれば、それ以上スコアの高低で細かく差がつくことはあまりありません。
二つ目は、職務経歴が同レベルの候補者が並んだときの「一歩の差」。経歴がほぼ同じ2人なら、TOEICで継続学習を証明できているほうに目が行く。これは面接官をやっていて実感したことです。
面接でスコアが話題になる瞬間
面接でTOEICが話題になるのは、実はスコアそのものより「なぜ受けたのか」「どう勉強したのか」のほうです。
僕が面接官側で印象に残っているのは、スコア自体は平凡でも「業務で海外とのやり取りが増えそうだったので、半年前から朝の時間で勉強を始めました」と語れる人でした。目的意識と行動が一本の線でつながっている。これは仕事の進め方の再現性として評価できます。
逆にもったいないのは、高スコアなのに「就活のときに取ったきりです」で終わるパターン。スコアに公式な有効期限はありませんが、何年も前のスコアだけだと「今も使えるのか」と疑問符がつきます。
聞かれてもいないのにスコアの話をしなくていい
もう一つ、候補者を見ていて感じたことを。英語が要件でない職種の面接で、自己PRの中心にTOEICを据えてしまう人がたまにいます。これは構成として損です。
面接官が知りたいのは「入社後に何で貢献してくれるか」。英語が業務に直結しないなら、TOEICは「継続的に学ぶ姿勢の証拠」として一言添える程度がちょうどいい塩梅です。主菜と副菜を取り違えない。それだけで話の説得力が変わってきます。
逆に英語が要件の職種なら、スコアの話は向こうから振られます。そのときに「点数の先」、つまり実際に英語でメールを書いた経験や、海外の情報源を仕事に活かした話まで用意しておくと強いですね。
要件スコアに届いていないとき、応募を見送るべきか
求人票に「TOEIC700点以上」とあって、手元のスコアが650点。このとき応募をやめるべきでしょうか。
僕の意見は「要件の書き方次第で、出してみる価値はある」です。求人票の英語要件には温度差があります。
- ▸「必須」と明記されている場合:要件未達での通過は難しいのが正直なところです
- ▸「歓迎」「尚可」と書かれている場合:職務経歴がマッチしていれば十分チャンスがあります
- ▸「入社までに取得」「同等の英語力」という表現の場合:選考中の学習姿勢や実務経験でカバーできる余地があります
採用側も「スコアは目安、欲しいのは職務経歴がマッチする人」と考えているケースは珍しくありません。実際、要件をすべて満たす応募者だけで採用が埋まることのほうが少ないんです。
判断に迷うなら、転職エージェント経由で応募するのが賢い方法です。エージェントは企業側の「本音の要件」を知っていることが多く、未達でも推薦してもらえるかを事前に確認できます。
それでも主役は職務経歴、という現実
ここまで書いておいてなんですが、はっきり言います。中途採用で内定を決めるのは職務経歴であって、TOEICではありません。
僕は4回の転職で5社を経験しましたが、TOEICのスコアが合否を分けた場面を、採用側としてもほとんど見たことがないんです。決め手になるのは常に「何をやってきて、何ができる人か」。
TOEICの正しい位置づけは、こうイメージしてください。
- ▸職務経歴=メインの武器
- ▸TOEIC=武器を運ぶための通行手形
通行手形がないと門前払いされる求人がある。でも、手形だけ立派でも中身がなければ採用されない。この力関係を見誤って「まずTOEICを上げてから転職活動しよう」と何年も先送りするのは、正直もったいない選択だと思います。
スコアと職務経歴のどちらを磨くべきか迷ったら、転職エージェントに今の市場価値を聞いてみるのが手っ取り早いです。使い方は転職エージェントの使い方にまとめています。
これから受けるなら、何点を目指すべきか
現実的な戦略はシンプルです。
1. まず600点。履歴書に書ける最低ライン。平均スコア(約615点)に近く、到達の現実味があります 2. 次に700点。受験者の上位約3分の1に入り、英語を使う求人の土俵に乗れます 3. 800点以上は「必要になってから」。外資系やグローバル職を本気で狙う段階で考えれば十分です
スコア100点アップには一般に200〜300時間の学習が必要と言われます(諸説あります)。働きながらだと半年〜1年がかりの投資になるので、「転職活動と並行して勉強し、スコアが出たら職務経歴書を更新する」くらいの動き方が現実的ではないでしょうか。
忙しい社会人向けの勉強の組み立て方は社会人のTOEIC勉強法に書いたので、参考にしてみてください。
注意したいのは、「キリのいい点数を取ってから動く」を理由に転職のタイミングを逃すこと。求人には募集期限があり、いい求人ほど早く埋まります。スコアは履歴書の一行ですが、タイミングは取り戻せません。点数を磨く時間と、市場に出るタイミング。両方を天秤にかけて動くのが、4回転職した僕の実感としてのベストです。
まとめ
転職におけるTOEICスコアの目安を、最後に整理します。
- ▸600点=履歴書に書いてマイナスにならないライン(全受験者平均は約615点)
- ▸620点=英語を使う部署の中途採用でスコアを参考にする企業の平均(IIBC公表データ)
- ▸700点=受験者の上位約3分の1。英語を使う求人の土俵に乗る目安
- ▸評価の主役はあくまで職務経歴。TOEICは足切り回避と「一歩の差」のための補助材料
- ▸面接ではスコアの高さより「なぜ・どう勉強したか」が見られている
スコアが足りないからと応募をためらうより、今の経歴で勝負しつつ並行してスコアを育てる。それが、採用側と転職者側の両方を経験した僕の結論です。
