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電子帳簿保存法、個人事業主は何をすればいい?|義務なのは「電子取引データの保存」だけ

電子帳簿保存法、個人事業主は何をすればいい?|義務なのは「電子取引データの保存」だけ

2026-06-12

7分で読めます

会計確定申告

「電子帳簿保存法に対応しないとペナルティがあるらしい」「でも何をどこまでやればいいのか、調べるほど分からなくなる」。個人事業主や副業中の会社員から、こういう声をよく聞きます。僕も副業の確定申告を毎年やっている身として、この法律の名前が出始めた頃は正直身構えました。

先に結論を言います。個人事業主・副業会社員に「義務」として関係するのは、3つの区分のうち「電子取引データの保存」だけです。帳簿を全部電子化しろという話でも、紙のレシートを全部スキャンしろという話でもありません。やるべきことは思っているよりずっと少ない。この記事で、最低限の対応ラインをはっきりさせていきます。

なお、税務はYMYL領域です。この記事は2026年6月時点の制度を一般的に整理したものなので、個別の税務判断は税務署・税理士に必ず確認してください。

電子帳簿保存法の3つの区分|義務なのはどれか

電子帳簿保存法は1つの法律ですが、中身は性質の違う3つの区分に分かれています。混乱の原因の9割はここです。まず表で整理しましょう。

区分内容義務か任意か
電子帳簿等保存会計ソフトで作った帳簿や決算書類を電子のまま保存する任意
スキャナ保存紙で受け取った請求書・領収書をスキャンして電子保存する任意
電子取引データ保存メール添付のPDF請求書など、電子でやり取りした取引情報を電子のまま保存する義務

電子帳簿等保存とスキャナ保存は、「やりたい人がやってもいいですよ」という制度です。一方、電子取引データ保存だけは話が別で、2024年1月から完全義務化されています。対象は、所得税や法人税で帳簿・書類の保存義務がある事業者すべて。つまり個人事業主はもちろん、副業で確定申告をしている会社員も含まれます

「電子帳簿保存法に対応しなきゃ」と漠然と不安になっている方は、まず「自分に義務があるのは電子取引データの保存だけ」と整理し直してください。それだけで、やることリストは一気に短くなります。

そもそも「電子取引」とは何を指すのか

電子取引とは、取引情報(請求書・領収書・契約書・見積書などに通常記載される内容)を電子データでやり取りすること。具体的にはこういうものです。

  • メールに添付されて届くPDFの請求書・領収書
  • ECサイトやクラウドサービスの管理画面からダウンロードする領収書
  • クラウドソーシングやアフィリエイトASPの報酬明細
  • クレジットカードや決済サービスの利用明細データ

副業をしている人なら、ほぼ間違いなくどれかに該当しているはずです。これらを「印刷して紙で保存すれば終わり」にできないのが、このルールのポイント。電子で受け取ったものは、原則として電子のまま保存する必要があります。

個人が最低限やるべきこと|PDF請求書の保存方法

では実務として何をすればいいのか。保存の要件は大きく「真実性の確保」と「可視性の確保」の2つですが、小規模な個人がシンプルに満たす方法はだいたい固まっています。

ステップ1:保存用フォルダを作り、規則的なファイル名を付ける

まず、パソコンやクラウドストレージに専用フォルダを作ります。年度ごとに分けておくと後が楽です。そして、保存するファイルに「日付_取引先_金額」が分かる名前を付けていく。たとえば「20260415_株式会社サンプル_33000.pdf」のような形式です。

なぜこんな名前にするかというと、保存データには「取引年月日・取引先・金額で検索できること」という検索要件があるから。専用システムがなくても、規則的なファイル名を付けてフォルダ検索できる状態にしておけば、この要件を満たす方法として国税庁も案内しています。ファイル名を変えたくない場合は、Excelで日付・取引先・金額とファイル名を対応させた索引簿を作る方法でも構いません。

ステップ2:改ざん防止の手当てをする(事務処理規程が現実的)

真実性の確保には、タイムスタンプの付与や訂正削除履歴の残るシステムの利用などいくつか選択肢がありますが、個人が一番手軽なのは「訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」を作って運用する方法です。国税庁の電子帳簿保存法特設ページに個人事業者用のひな型(Word形式)があり、名前を入れて日付を書けばほぼ完成します。お金は一円もかかりません。

検索要件が免除されるケースと猶予措置

「そこまで手が回らない」という方のために、緩和措置も知っておきましょう。

まず検索要件について。基準期間(2年前)の売上高が5,000万円以下の事業者は、税務調査の際にデータのダウンロードの求めに応じられるようにしておけば、検索要件への対応が不要になります。副業や開業したての個人なら、ほとんどがここに収まるはずです。

さらに、要件に沿った保存ができないことについて所轄税務署長が「相当の理由」があると認める場合の猶予措置もあります。事前申請は不要で、調査時にデータのダウンロードと整然とした出力書面の提示・提出に応じられる状態なら、要件を満たさずデータを単に保存しておく対応が認められる。システム整備が間に合わない、人手が足りないといった事情も該当し得るとされています。この猶予措置に現時点で終了期限は示されていませんが、「データを消さずに保存しておくこと」自体は免除されない点だけは押さえてください。

つまり最低ラインは、電子で受け取った請求書・領収書のデータを、消さずに分かる場所に貯めておくこと。その上で、ファイル名の工夫と事務処理規程まで整えれば、個人としては十分に堅い対応です。

紙のレシートはどうする?|紙のままで問題なし

ここもよくある誤解ポイントです。コンビニや飲食店で紙でもらったレシート、郵送で届いた紙の請求書。これらは紙のまま保存して何の問題もありません

スキャナ保存は「紙の原本を捨てて電子だけにしたい人」のための任意の制度です。要件を満たしてスキャナ保存に移行すれば紙を処分できて保管が楽になりますが、解像度などの要件を理解して運用する手間はかかります。書類の量が少ないうちは、月別の封筒やファイルに紙のまま放り込んでいく管理で十分というのが僕の感覚です。

整理すると、こうなります。

  • 電子でもらったもの → 電子のまま保存(義務)
  • 紙でもらったもの → 紙のまま保存でOK(スキャンして電子化するのは任意)

「全部電子化しなければ」と「全部印刷すれば安心」、どちらの思い込みも捨ててください。受け取った形のまま保存するのが基本形です。

会計ソフトはどこまで自動でやってくれるか

ここまでの対応、手作業でも不可能ではありません。ただ、取引の数が増えてくると、ファイル名の付与や索引簿の管理はじわじわ面倒になってきます。そこで選択肢になるのがクラウド会計ソフトです。

freee、マネーフォワード クラウド、弥生といった主要なクラウド会計ソフトには、電子帳簿保存法に対応したファイルボックス機能(証憑保存機能)が用意されています。レシートやPDFをアップロードすると日付・金額・取引先をある程度自動で読み取り、検索要件を満たす形で保管してくれる。訂正削除の履歴が残る仕組みなので、真実性の要件もシステム側でカバーされます。スマホで撮影した紙のレシートをスキャナ保存の要件で取り込める機能を持つものもあります。

さらに言えば、会計ソフトで帳簿を付けること自体が「電子帳簿等保存」に自然につながりますし、より厳格な要件を満たす「優良な電子帳簿」として届け出れば、過少申告加算税が5%軽減される優遇もあります。義務対応のためというより、経理全体の手間を減らす投資として導入したら、電帳法対応も付いてきたという順番で考えるのが健全だと思います。

どのソフトが自分の規模や用途に合うかは、会計ソフトの選び方で比較しているので、あわせて読んでみてください。freeeとマネーフォワードで迷っている方はfreeeとマネーフォワードの比較が参考になるはずです。

まとめ|不安の正体は「義務の範囲」を知れば消える

最後に要点をまとめます。

  • 電子帳簿保存法の3区分のうち、個人に義務があるのは電子取引データ保存だけ。電子帳簿等保存とスキャナ保存は任意
  • メール添付のPDF請求書やダウンロードした領収書は、電子のまま保存する。専用フォルダ+規則的なファイル名+事務処理規程が個人の基本対応
  • 売上5,000万円以下なら検索要件の免除があり、相当の理由があれば猶予措置もある。ただしデータの保存自体は必須
  • 紙でもらったものは紙のままで問題ない
  • 取引が増えてきたら、会計ソフトの証憑保存機能で自動化するのが現実的

調べ始めると不安ばかり膨らむ法律ですが、個人がやることは「電子でもらったデータを消さずに整理して貯める」に尽きます。今日、保存用フォルダを1つ作るところから始めてみてください。副業の確定申告そのものの流れは副業会社員の確定申告のやり方で、インボイス制度との関係は個人事業主のインボイス対応で解説しています。繰り返しになりますが、個別の判断に迷ったら税務署・税理士への確認を忘れずに。

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