実家に帰って親のスマホの請求書をたまたま見たら、月7,000円台だった。使い方を聞いてみると、電話とLINEと、たまに写真を撮るくらい。これはかなりの割合の家庭で起きていることです。
僕は以前、通信業界で働いていました。だから料金プランがどういう意図で設計されているのか、店頭で何が起きているのかは、事業者側の事情も含めてある程度わかります。ただ、この記事は「自分の親を乗り換えさせた武勇伝」ではありません。2026年8月時点の各社公式情報を突き合わせて整理したもので、そこに業界にいた人間としての注意点を足しています。数字はすべて税込です。
先に結論:親のタイプで選ぶ会社が変わる
比較サイトのランキングを上から順に見ていっても、たぶん決められません。理由ははっきりしていて、この選択で効いてくるのは料金より「乗り換えたあと、困ったときに誰が対応するか」だからです。まずここを決めてください。
| 親のタイプ | 向いている会社 | 月額の目安 |
|---|---|---|
| 店舗で相談したい(自分で操作を覚えたい/子が近くにいない) | イオンモバイル、UQモバイル、ワイモバイル | 638円〜2,700円台 |
| 子が全部やる(設定も支払いも子が管理。親は電話とLINEだけ) | povo、LINEMO、IIJmio、mineo | 0円〜990円 |
| 通話が長い(固定電話代わりに長電話する) | UQモバイル、ワイモバイル(60歳以上かけ放題880円) | 2,500円〜3,600円 |
親のタイプが「店舗で相談したい」なら、最安を追うのはやめたほうがいい。月に数百円安い会社を選んだせいで、毎回子どもに電話がかかってくる状態になったら、その数百円はまったく割に合いません。逆に「子が全部やる」で腹を括れるなら、選択肢は一気に広がって料金も下がります。
シニア向け主要4社の比較(2026年8月時点)
| イオンモバイル | UQモバイル | ワイモバイル | 楽天モバイル | |
|---|---|---|---|---|
| 最小プラン月額 | 638円(やさしいプラン1GB) | 1,628円(〜5GB・自宅セット割適用時) | 3,278円(シンプル3 S・5GB) | 1,078円(〜3GB) |
| 割引なしの素の価格 | 638円 | 4,048円 | 3,278円 | 1,078円 |
| 24時間かけ放題 | 1,210円(60歳以上) | 880円(60歳以上通話割) | 880円(60歳以上通話ずーっと割引) | 1,100円相当※ |
| 10分程度のかけ放題 | 935円(やさしい10分かけ放題) | 880円(10分・割引なし時) | 880円(だれとでも定額+) | ※パックに15分かけ放題を含む |
| 店舗 | 全国のイオン内200店舗以上 | auショップ・UQスポット | ソフトバンクショップ併売店 | 直営店 |
| 回線 | ドコモ/au網を借用 | au(自社) | ソフトバンク(自社) | 楽天(自社)+auローミング |
| 通信速度 | やさしいプランは下り最大1Mbps | 制限なし | 制限なし | 制限なし |
※楽天モバイルはシニア向けオプションパック(通常1,980円)が最強シニアプログラムのポイント還元で実質1,100円。15分かけ放題・あんしん操作サポート・迷惑電話SMS対策の3点セットです。
数字だけ眺めると「イオンモバイルが圧勝」に見えますよね。でもここに一つ、比較記事があまり強調しない落とし穴があります。
イオンモバイル:最安だが「1Mbps制限」を理解してから
60歳以上限定の「やさしいプラン」は、1GB 638円、3GB 858円、5GB 1,078円、10GB 1,628円と、1GBあたり110円刻みで選べます。同じ容量の通常プラン(さいてきプラン)より一律220円安い設計です。
ただし、やさしいプランは下りの最大通信速度が1Mbpsに制限されています。 もともと500kbpsだったものが2025年9月に引き上げられた経緯があり、改善はされました。1Mbpsあれば、LINE、Webページの閲覧、地図、標準画質の動画までは実用範囲。一方で高画質の動画やアプリの大型アップデートはかなり待たされます。親がYouTubeをよく見るタイプなら、220円足して通常のさいてきプランにしてください。ここを確認せずに「一番安いから」で契約すると、「新しいのにしたら遅くなった」という不満が返ってきます。
店舗サポートは、この会社を選ぶ最大の理由になり得ます。契約前の無料相談、MNPの手続きサポート、SIMロック解除の相談、通信の初期設定まで無料。データ移行やアプリ設定まで含めてお願いする場合はスタートパック5,500円、シルバーパック6,600円、ゴールドパック8,800円の有料メニューになります。有料と聞くと身構えますが、子どもが半日かけて実家で格闘するコストと比べれば、選択肢として十分ありです。
かけ放題は、フルかけ放題が通常1,650円のところ60歳以上は実質1,210円。10分かけ放題とサポートをセットにした「やさしい10分かけ放題」が実質935円という設定もあります。
UQモバイル:通話が多い親には、実はここが安い
UQモバイルの主力「トクトクプラン2」は素の月額が4,048円ですが、これは自宅セット割か家族セット割を前提にした価格設計です。自宅セット割(対象の光回線・電気とセット)を適用すると、5GBまでなら月1,628円、5GB超〜30GBでも2,728円。 家族セット割の場合は5GBまで2,178円になります。ここにau PAYカードお支払い割でさらに220円引き。
シニアにとっての本命は「60歳以上通話割」のほうです。24時間かけ放題の「通話放題」が通常1,980円のところ、永年1,100円引きの月880円で使えます。おまけに月220円のキャリアメールも無料。固定電話代わりに長電話する親であれば、ここが効きます。
5GBまで1,628円+かけ放題880円=月2,508円で、データも通話も気にしなくていい。実家に固定電話を残したまま「そろそろ解約しようか」と話している家庭にもハマる構成です。
注意点が2つ。35GBの「コミコミプランバリュー」は60歳以上通話割の対象外だということ。そして自宅セット割がないと素の4,048円になるので、実家の光回線や電気の契約状況を先に確認しておく必要があります。
ワイモバイル:割引の「別途申し込み」を絶対に忘れない
ワイモバイルは2026年6月2日に料金が改定され、現在のシンプル3はS(5GB)3,278円、M(30GB)4,378円、L(35GB)5,478円。素の価格だけ見ると高く見えますが、家族割引サービスで2回線目以降が1,100円引き、おうち割 光セット(A)で1,650円引きと、割引の効きがかなり大きいのが特徴です。PayPayカードでの支払い割引も組み合わさります。
60歳以上向けには「60歳以上 通話ずーっと割引キャンペーン」があり、24時間かけ放題の「スーパーだれとでも定額+」が1,100円引きの月880円、しかも永年です。
ここで一番伝えたいのは料金ではなく手続きの話。この割引は自動では付きません。別途申し込みが必要で、使用者の年齢を確認できる書類(運転免許証など)の提出も要ります。 UQモバイルの60歳以上通話割も同様に条件を満たしたうえでの手続きが前提です。店頭で契約したから大丈夫だろう、と思わずに、契約後の請求書で「1,100円引かれているか」を子どもが必ず確認してください。この手の申告制の割引は、放置されたまま何年も損をしているケースが本当に多い。
なお、この割引は使用者の年齢が基準です。契約者が子ども、使用者が親という登録にしても適用されます。支払い管理を子どもに寄せたい場合の実務的な逃げ道になるので、覚えておくと役に立ちます。
楽天モバイル:安さと「つながるか」を天秤にかける
Rakuten最強プランは3GBまで1,078円、20GBまで2,178円、無制限3,278円という段階制。65歳以上が対象の「最強シニアプログラム」に登録すると毎月110ポイントが還元され、最強家族割と合わせれば3GBまで実質858円まで下がります。シニア向けオプションパック(15分かけ放題+あんしん操作サポート+迷惑電話・SMS対策)は通常1,980円がポイント還元で実質1,100円。振り込め詐欺の被害補償が付帯するのも、親世代を意識した設計です。
安さと内容は魅力的。ただ、業界にいた人間として率直に言うと、楽天モバイルは「実家でどれだけ電波が入るか」がすべてです。自社エリアの整備は進んだものの、建物の奥や地下、地方の一部ではまだ差が出ます。親の家は、多くの場合その一軒でしか使われません。エリアマップだけで判断せず、帰省したときに実際に電波状況を確かめてから決めるのが安全です。ここは平均値ではなく、実家というピンポイントの話なので。
「子が全部やる」なら、povo・LINEMOという手もある
親が電話とLINEしか使わず、設定もトラブル対応も子どもが引き受けると決められるなら、オンライン専用に振り切るのが一番安い。povo2.0は基本料0円で、データ追加3GB(30日間)990円といったトッピングを必要なときに買う方式。LINEMOはベストプランが3GBまで990円、3〜10GBで2,090円です。
ただし、どちらも店舗窓口がありません。何かあったときの窓口は完全にあなたになります。そこを引き受けられるかどうかだけで判断してください。
実際いくら下がるのか
大手キャリアの中容量プランに補償やコンテンツのオプションが数本ぶら下がった状態だと、月7,000〜8,000円は珍しくありません。これを「イオンモバイル やさしいプラン1GB+10分かけ放題」に変えると月1,573円。「UQモバイル 5GB+60歳以上かけ放題」なら月2,508円。
差額は月4,500〜6,400円、年間で5万4,000円〜7万6,000円。1回の手間でこの差が毎年続くので、固定費の見直しとしては効率がかなり高い部類です。なぜここまで開くのかという構造的な話は携帯料金はなぜ高いのかで書いています。
親を説得するときのコツ
親世代がこの話を嫌がる理由は、だいたい「損したくないから」ではありません。変わることへの不安と、子どもに面倒をかけたくないという気持ちです。ここを外すと、いくら金額を並べても話が進みません。
- ▸「安くなるよ」より「電話番号もLINEもそのまま」を先に言う。 一番の不安はここです。番号は変わらないし、LINEのトーク履歴も引き継げると最初に伝えてください。
- ▸年額で言わない。 「年間6万円」は他人事に聞こえます。「月々5,000円、旅行の積立くらい」のほうが自分の生活として想像しやすい。
- ▸決定権を渡す。 「乗り換えといたから」は反発を生みます。2社に絞ったうえで「どっちがいい?」と選んでもらう形にすると通りやすい。
- ▸急がない。 帰省中の1日で終わらせようとすると、親は「よくわからないまま進められた」と感じます。今回は一緒に調べるだけ、次回に手続き、くらいの分割が現実的です。
乗り換え作業は分担する
丸投げも、全部代行も、どちらも失敗します。おすすめの切り分けはこうです。
子どもがやること 1. 現在の請求明細を見て、プラン・データ使用量・通話時間・付いているオプションを洗い出す(3ヶ月分あれば十分) 2. 端末をそのまま使う場合、SIMロックと対応バンドを確認する 3. 乗り換え先の申し込み(オンラインなら子どもの手元で完結できます) 4. APN設定などの初期設定、動作確認 5. 乗り換え後、割引がきちんと適用されているか初回請求で検算
親にやってもらうこと 1. 本人確認書類の準備(子名義にしない場合) 2. 手続き当日の本人確認・意思確認への回答 3. 新しい料金の把握(「今月からいくらになったか」を口に出して確認してもらう)
必ず親と一緒にやること LINEの引き継ぎ、おサイフケータイの移行、写真のバックアップ、キャリアメールの扱い。特にキャリアメールは要注意で、市役所や病院、金融機関の連絡先として登録されていることがあります。乗り換え前に、そのアドレスがどこに登録されているかを洗い出しておいてください。
MNPは現在、多くの事業者がワンストップ方式に対応しているので、以前のように解約元でMNP予約番号を取る手間はほぼなくなりました。ここは以前よりずっと楽になっています。
やってはいけないこと5つ
1. 親を一人で携帯ショップに行かせる。 これが最悪の選択です。店頭には不要なオプションが付きやすい構造的な理由があり、それは店員個人の悪意ではなく仕組みの問題(詳しくは携帯ショップのオプションは何が不要か)。判断材料を持たない状態で長時間の説明を受ければ、誰でも押し切られます。店舗を使うなら、子どもが同席するか、事前に「契約するプランとオプション」を紙に書いて持たせてください。 2. 今と同じ大容量プランのまま乗り換える。 「足りなくなったら困る」で20GBや30GBを選ぶと、乗り換えた意味が半減します。まず請求明細で実際の使用量を見てください。多くの場合、月1〜3GBです。足りなければ後から上げればいい。 3. 申告制の割引を申し込み忘れる。 前述のとおり、60歳以上向けのかけ放題割引は自動適用ではありません。初回請求での検算までがワンセットです。 4. 端末も同時に新品へ替える。 料金プランの変更と端末の変更を一度にやると、親は「全部変わった」と感じて操作が止まります。まずSIMだけ入れ替えて、端末は今のものを使い続けるのが安全。端末を替えるなら、半年ほど間を空けてください。 5. 乗り換え後に放置する。 数ヶ月後に「使いにくくない?」と一度聞くだけで、不満の芽が摘めます。ここを飛ばすと、親が勝手に店舗に相談に行って元のキャリアに戻る、という展開が起こり得ます。
まとめ
親のスマホ代の見直しが放置されがちなのは、難しいからではなく「誰がやるのか」が決まらないからです。
- ▸まず親のタイプを決める(店舗で相談したい/子が全部やる/通話が長い)
- ▸店舗が必要ならイオンモバイル・UQモバイル・ワイモバイル、子が引き受けるならpovo・LINEMOも選択肢
- ▸通話が長いならUQ/ワイモバイルの60歳以上かけ放題880円が効く
- ▸割引は申告制のものがある。初回請求で必ず検算する
- ▸作業は分担する。丸投げも全部代行も失敗する
料金は各社とも変更されます。この記事の数字は2026年8月時点のもので、申し込む前に必ず公式サイトで最新の条件を確認してください。
