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このガイドで分かること
僕は退職代行を「使った側」ではありません。「受けた側」です。
大手企業で管理職をしていたとき、部下の退職を何度も受けてきました。退職代行からの連絡が職場に入ったとき、会社の中で何が起きるのかも見てきました。だからこそ言えることがあります。
退職代行は、どこを選ぶかで「できること」が法律レベルで変わります。 値段やネームバリューだけで選ぶと、有給の交渉ひとつできない業者に2万円を払うことになりかねません。
このガイドでは、4回の退職経験と管理職としての実務視点から、次の5つを解説していきます。
- 退職代行の3つの運営形態と、それぞれが法律上できること
- 2026年8月時点の料金相場と、主要サービスの比較
- モームリ事件後に必須になった「安全な業者」の見極め方
- 失敗しない選び方チェックリストと、利用の流れ
- 辞めた後の手続きと、次の仕事への動き方
なお、2026年の退職代行業界は激動でした。最大手だったモームリの元社長が弁護士法違反(非弁提携など)の疑いで逮捕・起訴され、初公判で起訴内容を認めています。判決はこの記事を書いている時点で2026年8月28日に予定されている状況です(経緯はモームリ事件のその後に時系列でまとめました)。報道では、乱立した業者の倒産・撤退も相次いでいると伝えられています。「どの業者なら法的に安全なのか」を見極める目が、これまで以上に大事になっているわけです。
大前提:退職代行を使うこと自体は適法
最初に不安を消しておきます。退職は労働者の権利で、期間の定めのない雇用契約なら、民法627条により申し入れから2週間で雇用契約は終了します。会社の承認は要りません。
そして、退職の意思を第三者に伝えてもらうこと自体に違法性はありません。問題になるのは「業者が法律上できない行為(交渉など)をした場合」で、これは業者選びで回避できます。詳しくは退職代行は違法?非弁行為の境界線で解説しています。
退職代行の3つの運営形態——選び方の9割はここで決まる
退職代行は運営元によって3種類に分かれます。ここで選び方のほぼすべてが決まると僕は思っています。
| 運営形態 | 退職意思の伝達 | 有給・退職日の交渉 | 未払い賃金などの請求 | 料金相場 |
|---|---|---|---|---|
| 民間企業 | ○ | ×(やれば違法) | × | 1.5〜3万円 |
| 労働組合 | ○ | ○(団体交渉権) | △(裁判は不可) | 2〜3万円 |
| 弁護士 | ○ | ○ | ○(訴訟対応まで可) | 2.7〜7.7万円 |
この表で押さえてほしいことが2つあります。
ひとつは、民間業者にできるのは「伝えること」だけ、という点。「有給を消化したい」「退職日を月末にしたい」といった調整は法律上の「交渉」にあたり、弁護士資格のない民間業者がやると弁護士法72条違反(非弁行為)になります。会社側が「認めません」と言ったら、民間業者にできることはほぼありません。
もうひとつは、労働組合なら「交渉」ができるということ。憲法28条と労働組合法に基づく団体交渉権があるため、有給消化や退職日の調整を会社と交渉できます。それでいて料金は民間とほとんど変わりません。だから迷ったら労働組合運営、というのが僕の考えです。
パワハラの慰謝料請求や未払い残業代の回収までやりたいなら、最初から弁護士に依頼したほうがいいでしょう。この3形態の違いは労働組合と弁護士の退職代行の違いでさらに詳しく書きました。
退職代行の料金相場【2026年8月時点】
相場観を先に共有しておきます。
- ▸民間運営:1.5〜3万円。伝達のみでよければ最安クラス
- ▸労働組合運営:2〜3万円。交渉力込みでこの価格帯
- ▸弁護士運営:着手金2.7〜7.7万円。未払い賃金などを回収した場合は回収額の2割程度の成功報酬がかかるのが一般的
気をつけてほしいのは「安すぎる業者」です。1万円を切るような価格の業者も出てきていますが、業界には倒産の波が来ていると報じられています。前払いした直後に業者が消える、というリスクは価格が下がるほど現実味を帯びるんですよね。安さと後払いをどう考えるかは安い退職代行と後払いの比較で掘り下げています。
主要退職代行サービスの比較【2026年8月検証】
※料金検証日:2026年8月5日。各社公式サイトで確認していますが、料金・キャンペーンは変動するため、申し込み前に必ず最新情報を確認してください。
| サービス | 料金(税込) | 運営形態 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 退職代行ガーディアン | 19,800円 | 労働組合 | 東京都労働委員会に資格証明された東京労働経済組合。雇用形態問わず一律・追加費用なし。有給・未払い給与の交渉可 |
| 退職代行Jobs | 27,000円 | 民間(労組連携) | 顧問弁護士監修。労組交渉込みの安心パックプランは29,000円。後払い(審査あり)・全額返金保証 |
| 辞めるんです | 27,000円 | 民間 | 後払い対応(審査なし・退職日決定後の支払い)。退職できなければ費用不要 |
| 退職代行EXIT | 15,000円 | 民間 | 業界最安級(2回目以降10,000円)。転職サポートも無料。意思伝達のみでよい人向け |
| 弁護士法人みやび | 27,500円〜77,000円 | 弁護士 | 未払い賃金・慰謝料請求まで対応。回収時は回収額の20%の成功報酬 |
なお、かつて最大手だったモームリは新体制で営業を再開していますが、刑事裁判が続いている段階なので、このガイドのおすすめには含めていません。判断材料はモームリ事件のその後を読んでみてください。
タイプ別のおすすめ
- ▸とにかく確実に、有給も消化して辞めたい → 労働組合運営(ガーディアンなど)。交渉力と料金のバランスが一番いいと思います
- ▸手持ちが少ない・払って失敗したくない → 後払い対応の辞めるんですかJobs。倒産リスクの観点でも、前払いを避けられる意味は大きい
- ▸パワハラ・未払い残業代など会社と争う可能性がある → 弁護士一択(みやびなど)。労組では訴訟対応ができません
- ▸円満退職が見えていて、伝えるだけでいい → 民間最安級のEXITでも足ります
「受けた側」だから言える、業者選びで本当に大事なこと
管理職として退職代行からの連絡を受けた経験から言うと、会社側の対応は「どの形態の業者から連絡が来たか」でけっこう変わります。
民間業者からの連絡なら、人事は「本人の意思確認ができないので」と手続きを引き延ばす余地があります。労働組合や弁護士からの連絡なら、会社側は法務・人事マターとして淡々と処理します。団体交渉や法的請求に発展するリスクを、会社のほうがよく分かっているからです。受けた側から見ても、労組か弁護士からの連絡は会社を一番「ちゃんと」させる、というのが率直な実感でした。連絡が入った日の社内の様子は退職代行を使われた側の話に詳しく書いています。
もうひとつ。退職代行が入った後の社内は、あなたが想像するほど騒ぎません。残った側は粛々と引き継ぎを整理し、人事は規定通りに書類を出します。会社って、人が抜けても回るようにできていたりします。「申し訳なくて使えない」と感じている人は退職代行への罪悪感との向き合い方も読んでみてください。
モームリ事件後の「安全な業者」の見極め方
2026年の業界最大のニュースが、モームリ運営会社の元社長らの逮捕でした。問われたのは退職代行そのものではなく、交渉が必要な案件を提携弁護士に流し、紹介料を別名目で受け取っていたとされる「非弁提携」の構図です。つまり、大手で知名度があることと、法的に安全な運営であることは別問題だと業界全体に突きつけた事件でした。
この事件を踏まえると、避けるべき業者のシグナルはかなり具体的になります。
- 民間なのに「交渉します」と書いてある——非弁行為の疑いそのもの
- 民間なのに「提携弁護士を紹介します」を売りにしている——紹介料が絡めば非弁提携の疑いが出る、まさにモームリ事件の構図
- 労働組合を名乗るが実態が見えない——組合名・労働委員会の資格証明・組合規約が確認できるか。書類上だけの「なんちゃって労組」も指摘されています
- 運営会社の情報が曖昧——所在地・代表者名が出てこない、住所がバーチャルオフィスのみ
- 相場より極端に安い——撤退・倒産リスクと、業務品質への疑問
逆に言えば、労働委員会に資格証明された労働組合や弁護士法人が自ら運営しているサービスは、この事件の影響をほぼ受けていません。法的な整理は退職代行は違法?非弁行為の境界線でどうぞ。
失敗しない退職代行の選び方チェックリスト
申し込む前に、最低限この7つは確認しておきましょう。
- 運営形態が明記されているか——「労働組合」「弁護士法人」の名称が公式サイトで確認できるか。曖昧な業者は避ける
- 「交渉」を約束する民間業者を避ける——民間なのに「有給交渉します」と書いてある業者は非弁リスクがある
- 労組運営なら実態を確認——労働委員会の資格証明や組合規約の記載があるか
- 追加料金の有無——「一律◯円・追加なし」と明記されているか
- 運営会社の情報開示——会社名・所在地・代表者が確認できるか
- 連絡手段と対応時間——LINE相談の返信が速いか。即日対応の条件は何か
- 支払いタイミング——前払いか後払いか。返金保証の条件はどうか
退職代行を使う流れ——相談から退職完了まで
初めてだと想像しづらいと思うので、一般的な流れを整理しておきます。
- 無料相談——ほとんどのサービスはLINEで相談無料。状況を伝えて見積もりと段取りを確認する
- 申し込み・支払い——前払いが基本。後払い対応のサービスなら実行後の支払いも選べる
- ヒアリング——退職希望日、有給の残日数、貸与物、会社に伝えてほしいことをすり合わせる
- 実行日——決めた日の朝、サービスが会社へ連絡。あなたはもう出社しなくていい状態になる
- 書類のやり取り——退職届や貸与物(PC・社員証・保険証など)は郵送で返す。会社と直接話す必要はほぼない
- 退職完了——離職票・源泉徴収票などを受け取って終了
受けた側の実務として補足すると、代行からの連絡はだいたい朝イチに電話で入り、受けた会社側は人事が本人の意思確認をして、上司には「本人へ直接連絡しないでください」と釘が刺されます。あとは事務処理として流れていくのが、少なくとも僕が見てきた大手の現場でした。
退職代行を使わなくていい人・向かない人
正直に言うと、全員に必要なサービスではありません。
- ▸上司に言い出せる状態の人——自分で伝えれば0円です。退職代行は「言えないほど追い詰められた状況」を打開する道具だと思っています
- ▸公務員——労働組合法の適用外で、民間業者や労組型では対応できないケースが多い。弁護士に相談するのが確実です
- ▸会社と金銭で争うことが確定している人——労組型を挟むより、最初から弁護士に依頼したほうが二度手間になりません
- ▸すでに円満退職が固まっている人——通常の退職手続きで足ります
逆に、出社を考えると体が動かない、引き止めが強くて話が進まない、パワハラで直接話したくない——そういう状況なら、使うことをためらう必要はないでしょう。
辞めた後のことも、少しだけ考えておく
退職代行で辞めること自体は、転職活動でほぼ問題になりません。退職証明書や離職票に「退職代行を利用した」とは書かれないからです(例外も含めて退職代行は転職に不利になる?で解説しました)。
事務手続きとしては、離職票と源泉徴収票の受け取り、健康保険・年金の切り替え、必要なら失業保険の申請までがワンセット。労組や弁護士運営なら、離職票の発行催促まで対応してくれるところが多いです。
ただ、僕が4回の転職で学んだのは、「辞める」と「次を決める」はセットで動かしたほうが圧倒的に楽だということです。在職中に転職エージェントへの登録だけでも済ませておくと、辞めた後の空白期間の不安がまったく違います。転職ノウハウのカテゴリに職務経歴書の書き方からエージェントの使い方までまとめているので、退職の手配と並行して眺めてみてください。
よくある質問
Q. 退職代行を使うのは違法ではない?
A. 使うこと自体は適法です。退職は民法627条で認められた労働者の権利で、意思を第三者に伝えてもらうことに違法性はありません。ただし民間業者が有給などの「交渉」をすると弁護士法違反になるので、交渉が必要なら労働組合か弁護士運営を選んでください。
Q. 即日辞められる?
A. 「翌日から出社しない状態」をつくることは多くの場合できます。正社員は退職の意思表示から2週間で契約が終了し、その期間を有給消化や欠勤で埋める形になります。有給消化を会社と交渉できるのは労働組合か弁護士運営だけ、という点はここでも効いてきます。
Q. 料金相場はいくら?
A. 実績ある業者で1.5〜3万円です(2026年8月時点)。民間は1.5〜3万円、交渉ができる労働組合運営は2〜3万円、法的請求まで対応する弁護士運営は着手金2.7〜7.7万円+回収額の2割程度の成功報酬が目安です。
Q. 会社から本人に連絡が来ることはない?
A. 労組・弁護士運営なら「本人へ直接連絡しないでほしい」と会社に要望してもらえ、多くの会社は応じます。受けた側の経験でも、人事は上司に「直接連絡しないように」と指示していました。ただし連絡を法的に禁止する効力まではないので、貸与物や書類の件で会社から連絡が来る可能性はゼロではありません。
まとめ:迷ったら「労働組合運営」から検討する
- ▸退職代行は適法。ただし運営形態で「できること」が法律レベルで変わる
- ▸民間は伝達のみ、労働組合は交渉可、弁護士は法的請求まで可
- ▸料金相場は1.5〜3万円。労組運営なら2万円弱で交渉力まで手に入る
- ▸モームリ事件後は「運営の中身」の確認が必須。交渉や弁護士紹介を売りにする民間業者は避ける
- ▸会社と争う可能性があるなら最初から弁護士へ
- ▸辞める手配と並行して、次の準備(エージェント登録)も進めると楽になる
あなたの心と体より大事な会社は存在しません。「言い出せない」だけで消耗し続けているなら、退職代行は逃げではなく、まっとうな手段のひとつだと僕は思っています。
*本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。料金・サービス内容は2026年8月5日時点の各社公式サイトの情報に基づきます。個別の事案については弁護士等の専門家にご相談ください。*
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