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退職代行は違法?非弁行為との境界線と合法的に使う方法を解説

退職代行は違法?非弁行為との境界線と合法的に使う方法を解説

2026-06-10

8分で読めます

退職代行違法性非弁行為法律

※本記事には広告(プロモーション)が含まれます。

「退職代行を使いたい。でも、違法なサービスだったらどうしよう」

「あとから会社に訴えられたりしないか不安で、申し込みボタンが押せない」

この記事を開いたあなたは、たぶんそういう状態だと思います。2026年2月には大手退職代行「モームリ」の社長が逮捕されたという報道もあったので、「退職代行=危ないもの」というイメージが強くなっているのも無理はありません。

僕は転職4回・5社を経験してきた会社員で、大手企業では管理職として部下の退職手続きや就業規則にも触れてきました。退職代行を自分で使った経験はありませんが、だからこそ「受け取る会社側」の視点も含めて、法律の条文ベースで冷静に整理できるんじゃないかと思っています。

答えを先に書いてしまうと、退職代行というサービス自体は違法ではありません。ただ「どの業者が、何をするか」によって、合法と違法の線がはっきり分かれます。この記事ではその境界線を、できるだけ噛み砕いて解説していきます。

結論:退職代行は違法ではない。ただし「業者が何をするか」で変わる

まずは全体像から見ていきましょう。退職代行が合法か違法かは、サービスの存在そのものではなく、業者の運営形態と行為の範囲で決まります。

  • 民間企業の退職代行:退職の意思を会社に「伝える」だけなら適法
  • 労働組合の退職代行:有給消化や退職日などの「交渉」まで適法にできる
  • 弁護士の退職代行:交渉に加え、未払い賃金の請求や訴訟対応まで可能

「退職代行は違法か?」という問いの立て方が、そもそも少しズレているのかもしれません。本当に確認すべきなのは「この業者は、法律上できる範囲のことだけをやっているか」のほうです。

そしてもう一つ大事なこと。仮に業者側が違法な行為(後述する非弁行為)をしたとしても、罪に問われるのは基本的に業者側であって、利用者が処罰の対象になるという性質の話ではありません。ただし、違法業者を使うと「交渉が無効になる」「退職手続きがこじれる」といった実害を受けるのは利用者のほうだったりします。だからこそ、業者選びが大事になってくるんです。

退職は労働者の権利(民法627条)。会社の許可はいらない

そもそもの大前提から確認しておきましょう。退職するのに、会社の承認は法律上必要ありません

民法627条1項にはこう書かれています(条文はe-Gov法令検索の民法で原文を確認できます)。

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

正社員のような「期間の定めのない雇用契約」であれば、退職を申し入れてから2週間が経過すれば、雇用契約は終了します。会社が「認めない」と言おうが、法律上は終わります。退職は労働者の一方的な意思表示で成立する権利です。

なお、契約社員など有期雇用の場合は扱いが異なり、原則として「やむを得ない事由」が必要とされます(民法628条)。自分の契約形態がどちらなのかは、申し込む前に確認しておいてください。

ここで管理職を経験した立場から補足すると、就業規則に「退職は1ヶ月前までに申し出ること」と書いてある会社は多いです。僕がいた会社もそうでした。法律(民法627条)と就業規則のどちらが優先するかについては、法律が優先するという解釈が一般的とされています。とはいえ、円満に辞めたいなら就業規則の期限に合わせるに越したことはありません。ただ、退職代行を使う場面って「円満さより、もう限界」というケースが多いはず。最低ラインとして「2週間」という法律上の目安を知っておくだけで、気持ちはだいぶ楽になると思います。

違法になるのは、業者が「非弁行為」をしたとき(弁護士法72条)

では、何をすると違法になるのか。キーワードは非弁行為

弁護士法72条は、弁護士でない者が、報酬を得る目的で法律事務(交渉や請求など)を取り扱うことを禁止しています。これに違反するのが、いわゆる「非弁行為」と呼ばれるものです。

退職代行に当てはめると、線引きはこうなります。

  • 適法:「本人が退職を希望しています」と会社に伝える(意思の伝達。法律上は「使者」の役割)
  • 違法のおそれ:「有給を全部消化させろ」「未払い残業代を払え」と会社と交渉・請求する

民間企業の退職代行ができるのは、あくまで「伝書鳩」としての伝達まで。条件を取りに行く交渉を始めた瞬間、非弁行為に該当するおそれが出てきます。そして非弁業者が行った交渉は法的に無効と評価されるリスクがあり、お金を払ったのに何も解決していない、という事態になりかねません。

モームリ社長の逮捕容疑は「非弁提携」だった

2026年2月、退職代行大手「モームリ」運営会社の社長らが弁護士法違反の疑いで逮捕されたと報道されました。報道によれば、容疑は退職代行そのものではなく、利用者に特定の弁護士を紹介し、その見返りに弁護士側から紹介料を受け取っていた疑い。いわゆる「非弁提携」に関するものとされています。

弁護士法72条は、報酬を得る目的で法律事務を「周旋(あっせん)」することも禁じており、弁護士法27条は弁護士側がそうした者と提携することを禁じています。つまりこの事件は「退職代行サービス=違法」を意味するものではなく、問われたのは「業者と弁護士のお金のやり取りの仕方」のほうです(捜査・裁判の結論が出ていない段階なので、断定は避けます)。事件の経緯と業界への影響はモームリ事件のその後で詳しくまとめています。

運営形態別にできること・できないこと【一覧表】

ここまでの話を表にしておきます。退職代行は運営形態によって、法律上できることがまったく違います。

できること民間企業労働組合弁護士
退職意思の伝達
有給消化・退職日の交渉×(非弁行為のおそれ)○(団体交渉権)
未払い賃金・残業代の請求×△(交渉までは可)
損害賠償への対応・訴訟代理××
料金の目安1.5〜3万円2〜3万円3〜7万円

ポイントは、労働組合の位置づけ。労働組合には憲法28条で団体交渉権が保障されており、労働組合法に基づいて会社と「交渉」ができます。会社側は正当な理由なく団体交渉を拒否できません(労働組合法7条)。だから、民間企業ではできない「有給を消化したい」「退職日を調整したい」といった交渉が、労働組合運営の退職代行なら適法にできるわけです。

一方で、訴訟になったときの代理や、こじれた損害賠償への対応までカバーできるのは弁護士だけ。労働組合と弁護士のどちらを選ぶべきかは、労働組合と弁護士の退職代行の違いで深掘りしています。

会社から「辞めさせない」「損害賠償する」と言われたら

退職代行をためらう人の不安で一番多いのが、これだと思います。「お前が辞めたら損害賠償だ」と会社に言われたら、と。

一般論として整理すると、こうした発言の多くは引き止めのための「脅し」に近いケースが多いとされています。理由は大きく2つ。

1つ目は、さっき見た民法627条。退職は労働者の権利であり、適法な手順で退職すること自体を理由に損害賠償が認められるのは、極めて限定的なケースとされています。実際に会社が訴訟を起こすには、退職と損害の因果関係を会社側が立証する必要があり、そのハードルはかなり高いものです。

2つ目は、労働基準法16条。「辞めたら違約金100万円」のように、あらかじめ違約金や賠償額を定めておくことは、労働基準法16条で明確に禁止されています。雇用契約書や誓約書にそう書いてあったとしても、その定め自体が法律違反です。

ただし、「どんな辞め方をしても絶対に大丈夫」とは言えません。引き継ぎを一切せず重要案件を放置して失踪する、会社の備品を持ったまま連絡を絶つ、といった行為はトラブルの種になり得ます。退職代行を使うにしても、貸与物の返却や引き継ぎメモの用意など、最低限の手順は踏んでおきたいところ。それが結局、自分を守ることにつながります。会社側が強硬で訴訟をちらつかせてくるような状況なら、最初から弁護士運営の退職代行を選んでおくと安心だと思います。

安全な退職代行を見分ける3つのチェックポイント

違法リスクのある業者を避けるためのチェックポイントを、3つだけ挙げておきます。

1. 運営形態が明記されているか

公式サイトで「株式会社○○」「○○ユニオン(労働組合)」「○○法律事務所」と、運営主体がはっきり書かれているかをまず確認してみてください。労働組合なら組合名、弁護士なら所属弁護士会と弁護士名まで確認できると、なお安心。運営主体がどこにも書かれていないサービスは、その時点で候補から外して構いません。

2. 民間企業なのに「交渉できます」とうたっていないか

ここが一番の見極めポイント。民間企業の退職代行が「有給消化も交渉します」「残業代も請求できます」と書いていたら、それは非弁行為を宣言しているようなものです。逆に「当社は意思の伝達のみを行います」と業務範囲を誠実に説明している民間業者は、法律を理解して運営している証拠でもあります。

3. 「弁護士監修」の意味を取り違えていないか

「弁護士監修」という表記は、サービス設計について弁護士の助言を受けたという意味であって、あなたの退職を弁護士が対応してくれるという意味ではありません。監修と運営は別物。交渉や請求まで必要なら、労働組合か弁護士が「運営」しているサービスを選ぶ必要があります。

この3点を踏まえた具体的なサービスの比較と選び方は、安全な退職代行の選び方 完全ガイドにまとめているので、次に読んでみてください。

まとめ:退職代行は合法。ただし「範囲」を理解して選ぶ

この記事の要点を、もう一度ざっくり整理しておきます。

  • 退職は民法627条で認められた労働者の権利。会社の許可は不要
  • 退職代行サービス自体は違法ではない
  • 違法になるのは、弁護士でも労働組合でもない業者が「交渉・請求」をしたとき(弁護士法72条の非弁行為)
  • モームリ事件の容疑は非弁提携(業者と弁護士の紹介料のやり取り)に関するものと報道されており、「退職代行=違法」ではない
  • 「損害賠償するぞ」は脅しに近いケースが多いとされるが、不安が強いなら弁護士運営を選ぶ

会社を辞めること自体に、後ろめたさを感じる必要はありません。僕は5社を渡り歩いてきましたが、辞めるという決断が人生を悪くしたことは一度もありませんでした。大事なのは、辞め方の「手段」で余計なリスクを背負わないこと。運営形態と業務範囲をきちんと確認して、法律の枠内で動いてくれるサービスを選んでください。


※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。記載内容は執筆時点の情報・報道に基づいています。個別の事案については、弁護士にご相談ください。

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