会社を辞めた翌日から、保険証(今は資格確認書やマイナ保険証ですね)は使えなくなり、年金も税金も「会社がやってくれていた状態」が全部止まります。じゃあ何をどの順番で、いつまでにやればいいのか。これが意外とまとまった形で頭に入ってこないんですよね。
僕は転職を5回してきたので、退職後の手続きも5回経験しています。市役所とハローワークを行ったり来たりした回数なら、そのへんの人事担当者に負けない自信があります(自慢になっていない気もしますが)。この記事では、その経験を踏まえて退職後にやることを順番と期限つきの一覧に整理しました。2026年8月時点の制度にもとづいています。
退職後にやること早見表
まずは全体像から。退職後の手続きは、大きく分けて健康保険・年金・失業保険・住民税・確定申告の5つです。
| 手続き | 期限 | 場所 | 主な必要書類 |
|---|---|---|---|
| 健康保険(国民健康保険に加入) | 退職日の翌日から14日以内 | 市区町村役場 | 健康保険資格喪失証明書、本人確認書類 |
| 健康保険(任意継続) | 退職日の翌日から20日以内 | 協会けんぽ支部/健康保険組合 | 任意継続被保険者資格取得申出書 |
| 健康保険(家族の扶養に入る) | 退職後5日以内が目安 | 家族の勤務先 | 被扶養者(異動)届、退職日・収入がわかる書類 |
| 年金(国民年金に切り替え) | 退職日の翌日から14日以内 | 市区町村役場 | 基礎年金番号通知書(年金手帳)またはマイナンバーカード、退職日がわかる書類 |
| 失業保険(雇用保険の基本手当) | 離職票が届き次第すぐ ※受給期間は離職日の翌日から原則1年 | ハローワーク | 離職票1・2、マイナンバーカード、本人名義の通帳など |
| 住民税 | 納付書の期限ごと(退職月により扱いが変わる) | 市区町村から届く納付書で納付 | 納付書 |
| 確定申告 | 翌年2月16日〜3月15日 | 税務署/e-Tax | 源泉徴収票、各種控除証明書 |
期限が最も短いのは健康保険(国保)と年金の「14日以内」。この2つは市区町村役場の窓口で同じ日にまとめて手続きできるので、退職したらまず役所、と覚えておくとシンプルです。
会社から受け取る書類・返すもの
手続きの前提として、会社から受け取る書類を確認しておきましょう。どれかが欠けると、どこかの手続きで詰まります。
- ▸離職票(雇用保険被保険者離職票1・2):失業保険の申請に必須。退職後10日〜2週間ほどで郵送されるのが一般的
- ▸健康保険資格喪失証明書:国保加入の手続きで使う
- ▸源泉徴収票:確定申告や転職先の年末調整で使う(退職後1ヶ月以内の交付が原則)
- ▸雇用保険被保険者証:転職先に提出する
逆に会社へ返すものは、資格確認書(交付されている場合)や社員証、貸与PCなど。2025年12月2日以降、従来の健康保険証は完全に使えなくなったので、いま返すのは「資格確認書」です。マイナ保険証を使っている人は返却物こそありませんが、退職の翌日からは在職中の保険資格が使えなくなる点は同じ。切り替え手続きが済むまでの受診には注意してください。
最初の分岐:転職先が決まっているか、いないか
やることの量は、この分岐でまったく変わります。
転職先が決まっている人(空白期間なし)
退職日の翌日が次の会社の入社日なら、健康保険と年金の切り替えは転職先が入社手続きの中でやってくれます。自分で役所に行く必要はありません。やることは実質、書類の受け渡しだけ。
- ▸雇用保険被保険者証・源泉徴収票・マイナンバー等を転職先へ提出
- ▸住民税は「特別徴収の継続」の手続きを前職・転職先間でしてもらえれば、給与天引きが途切れず続く
- ▸失業保険の申請は不要
ただし、退職から入社まで1日でも空白があると話は別です。その期間は国民年金と国民健康保険(または任意継続)に入る義務が生じます。特に月末をまたぐ空白は、その月の保険料を自分で納めることになるので、「1ヶ月だけ空けてのんびりしよう」という人は保険料の発生を織り込んでおきましょう。
転職先が決まっていない人
この記事の残り全部が該当します。健康保険・年金・失業保険・住民税・確定申告、フルコースです。順番に見ていきましょう。
なお、これから仕事を探すのであれば、失業保険の手続きと並行して転職活動の準備も始めておくと空白期間を短くできます。エージェント選びは転職エージェントの選び方ガイドにまとめているので、落ち着いたタイミングでどうぞ。
手続き1:健康保険——3つの選択肢から14〜20日以内に選ぶ
退職日の翌日から、会社の健康保険は使えません。選択肢は3つあります。
| 選択肢 | 期限 | 保険料の考え方 |
|---|---|---|
| 家族の扶養に入る | 5日以内が目安 | ゼロ円 |
| 国民健康保険 | 14日以内 | 前年の所得をもとに計算 |
| 任意継続(それまでの健保を最長2年継続) | 20日以内 | 在職時の約2倍(会社負担分がなくなる)。ただし上限あり |
損得の考え方
僕が毎回やっている判断手順はこうです。
1. 扶養に入れるなら扶養が最強。保険料ゼロなので迷う余地がありません。条件は年収130万円未満の見込み(60歳以上等は180万円)など。ただし失業保険の基本手当を日額3,612円以上受け取る間は扶養に入れない扱いの健保が多いので、受給予定がある人は家族の健保組合に確認を 2. 扶養に入れないなら、国保の見積もりと任意継続の保険料を比較する。国保は市区町村の窓口や電話で試算してもらえますし、任意継続の保険料は退職前に会社か協会けんぽに聞けばわかります 3. 会社都合退職(倒産・解雇・雇い止め)なら国保の軽減制度を必ず確認。前年の給与所得を30/100に圧縮して保険料を計算してくれる制度があり、これが使えるなら国保が一気に有利になります
一般論としては、前年の収入が高い人ほど国保が高くなるので任意継続が有利になりやすく、扶養家族が多い人も(任意継続なら家族分の保険料がかからないため)任意継続に軍配が上がりがち。逆に退職2年目は前年所得が下がって国保が安くなるので、「1年目は任意継続、2年目から国保」という切り替えもできます。2022年の制度改正で任意継続は自分の意思でやめられるようになったので、この作戦が普通に使えるようになりました。
期限だけは本当に注意してください。特に任意継続の「20日以内」は郵送必着で、過ぎたら原則加入できません。国保の14日は過ぎても加入自体はできますが、保険料は退職日の翌日までさかのぼって発生します。
手続き2:年金——14日以内に国民年金へ
厚生年金は退職日の翌日に資格を失うので、14日以内に国民年金(第1号被保険者)への切り替えを市区町村役場で行います。持ち物は基礎年金番号通知書(年金手帳)かマイナンバーカード、それと離職票や資格喪失証明書など退職日がわかる書類。国保の手続きと同じ窓口フロアで済むことが多いので、1回の来庁でまとめてしまいましょう。
配偶者を扶養に入れていた人は要注意で、配偶者も第3号から第1号への切り替えが必要です。これ、忘れている人が本当に多い手続きです。
保険料は月およそ1万8,000円(年度ごとに改定)。無収入の身にはずっしり来る金額ですが、失業を理由にした特例免除があります。離職票などを添えて申請すれば、本人の前年所得を除外して免除審査をしてくれる制度で、退職直後なら通る可能性が十分ある。払えないからと未納で放置するのが一番もったいないので、窓口で「失業による特例免除を申請したい」と伝えてみてください。
手続き3:失業保険——離職票が届いたらすぐハローワークへ
転職先が決まっていない人の生命線です。手続きの流れはシンプルで、離職票が届いたら、ハローワークで求職申込みと離職票の提出をするだけ。持ち物は離職票1・2、マイナンバーカード、本人名義の通帳あたりです。
急ぐべき理由は、受給期間が離職日の翌日から原則1年と決まっているから。手続きが遅れるほど、所定給付日数が残っていても期間切れでもらい切れないリスクが上がります。
もらえるタイミングは離職理由で変わります。会社都合なら7日間の待期のあとすぐ支給対象になりますが、自己都合の場合は待期に加えて給付制限があります。ここは2025年4月の制度改正で原則2ヶ月→1ヶ月に短縮された一方、5年内に3回以上自己都合で辞めていると3ヶ月になるなど条件が細かいので、自己都合退職の失業保険はいつからもらえるかで詳しく解説しています。ネット上には改正前の「2〜3ヶ月待ち」という古い情報がまだ大量に残っているので、そこだけは気をつけて。
金額の目安は退職前6ヶ月の給与から計算します。ざっくり言えば直近の給与の50〜80%×日数分ですが、月収別の具体額は失業保険はいくらもらえるかの計算ガイドでシミュレーションできるようにしました。
ちなみに、退職代行を使って辞めた場合でも失業保険は普通にもらえます。離職票の受け取り方など細かい注意点は退職代行と失業保険の関係にまとめました。まだ辞められておらず「言い出せない」段階の人は、先に退職代行の選び方ガイドを読んでもらったほうがいいかもしれません。
また、病気やメンタル不調が理由で「すぐに働ける状態じゃない」という人は、失業保険より先に傷病手当金など別の給付を検討する道もあります。民間の申請サポートサービスを含めた選択肢の整理は社会保険給付金サポートの比較記事を参考にしてください。
手続き4:住民税——「後払い」の仕組みだけ理解しておく
住民税は前年の所得に対して翌年6月〜翌々年5月に払う後払い方式です。だから退職して無収入になっても、前年に働いていた分の請求はしっかり来ます。ここで慌てないために、退職月ごとの扱いだけ押さえておきましょう。
- ▸1〜5月に退職:5月分までの残りが最後の給与から一括徴収される(原則)
- ▸6〜12月に退職:残りは自分で納付書で払う「普通徴収」に切り替わる。希望すれば最後の給与からの一括徴収も選べる
手続きらしい手続きは基本的に不要で、市区町村から届く納付書の期限どおりに払えばOK。ただ、退職の翌年にも前年所得分の納付書が届くので、住民税の分のお金は退職前に取り分けておくのが5回退職した僕からの一番実感のこもったアドバイスです。無職2年目の住民税、本当に忘れた頃にやって来ます。
手続き5:確定申告——年内に再就職しなければ翌年2〜3月に
年の途中で退職して12月31日時点で無職の場合、年末調整を受けられないので、翌年2月16日〜3月15日に確定申告をします。毎月の給与から源泉徴収される所得税は「12月まで働く前提」で多めに引かれているため、退職した年の確定申告は還付になるケースが大半。つまりやらないと損です。
源泉徴収票のほか、退職後に自分で払った国民年金・国保・任意継続の保険料も社会保険料控除の対象になるので、納付額がわかる書類は捨てずに取っておきましょう。還付申告だけなら翌年1月1日から5年間できるので、期間を過ぎて焦る必要はありません。年内に転職できた場合は、転職先の年末調整に前職の源泉徴収票を出せば申告不要です。
モデルスケジュール:9月30日退職・転職先未定の場合
流れを時系列にするとこうなります。自己都合退職のケースです。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 9月30日(退職日) | 資格確認書などの返却、離職票の送付先を確認 |
| 10月上旬 | 市区町村役場で国保+国民年金をまとめて手続き(〜10月14日)。必要なら年金の特例免除も申請 |
| 10月中旬 | 離職票が届いたら即ハローワークで求職申込み。7日間の待期へ |
| 11月中旬〜下旬 | 給付制限(原則1ヶ月)明け。初回の失業認定を経て、最初の振込は申請からおよそ1.5〜2ヶ月後 |
| 翌年2月16日〜3月15日 | 確定申告(多くは還付) |
| 翌年6月 | 前年所得分の住民税納付書が届く |
見てのとおり、最初の振込までは無収入の期間が2ヶ月近くできます。ここを貯金でしのげるかが退職後の生活設計の肝で、不安がある人ほど手続きを前倒しする価値があります。
まとめ:役所→ハローワーク→税金の順で淡々と
退職後の手続きは数こそ多いものの、順番はシンプルです。
1. 14日以内:市区町村役場で健康保険(3択から選ぶ)と国民年金 2. 離職票が届いたら:ハローワークで失業保険の申請 3. あとから:住民税は納付書どおり、確定申告は翌年2〜3月
5回やってきた実感として、最初の1週間で役所関係を片づけてしまえば、あとは待ち時間のほうが長いくらいです。期限だけ守って、淡々といきましょう。各手続きの深掘りは、この記事からリンクしている個別記事で順次カバーしていきます。
