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30代未経験のエンジニア転職は「やめとけ」?求人統計で見た現実と3つのルート

30代未経験のエンジニア転職は「やめとけ」?求人統計で見た現実と3つのルート

2026-08-06

11分で読めます

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「30代・未経験からエンジニアに」で検索すると、「2030年に79万人不足」と「やめとけ」が同時に出てきます。真逆のことを言われて、判断がつかないまま数ヶ月経っている——という人は多いはずです。

先に結論を書きます。30代未経験からのエンジニア転職は可能です。ただし、2020年前後と同じ難易度ではありません。そして現実的なルートは3つに絞られます。

1. 今の会社の中でIT寄りの仕事に移り、「経験者」として転職する 2. 学習とポートフォリオで「未経験だが手が動く」状態を作ってから応募する 3. 未経験可の求人(インフラ・運用・テスト・社内SE)から入り、2〜3年でポジションを組み替える

最初に立場を書いておきます。僕はデジタルマーケティングを10年以上やってきた会社員で、転職は5回。エンジニアではありません。未経験からエンジニアになった体験は持っていないので、そこは語れない。書けるのは、事業会社のDX推進側で開発チームと一緒にプロジェクトを回し、エンジニアがどう評価され、誰が伸びて誰が消えていったかを横で見てきた視点と、35歳で転職した実体験です。煽らないぶん、地味な話になります。

まず数字を見る:入口は「消えた」のではなく「移動した」

感情論の前に、公的な数字を並べます。

指標直近の数値
全職業の有効求人倍率1.18倍(2026年3月)
情報処理・通信技術者の有効求人倍率1.47倍(2026年4月)
正社員の有効求人倍率0.99倍(2026年3月)
ハローワークの情報通信業・新規求人前年同月比 15.8%減(2026年3月)
民間求人広告のIT技術者(正社員)掲載件数前年同月比 35.7%増(2026年3月)

出典は厚生労働省「一般職業紹介状況」と、民間の求人広告掲載件数の集計です。

一見矛盾しています。ハローワークではIT系が全産業で最大の落ち込みなのに、有料の求人広告ではIT技術者が3割以上増えている。起きているのは、募集の場所が移ったということです。企業は即戦力で設計できる人には金を払って有料媒体で探しに行き、広く浅く集める採用を減らしている。

未経験者にとっては、率直に言って不利な変化です。未経験の入口はもともと「大量に集めて選ぶ」採用が支えていました。そこが細っている。一方で、情報処理・通信技術者の有効求人倍率は1.47倍と全職業平均をまだ上回る。需要が消えたのではなく、宛先が絞られた。いま起きていることの要約は、たぶんこれです。

「2030年に79万人不足」を根拠にしてはいけない

未経験転職を勧める記事のほぼ全部が、経済産業省の「IT人材需給に関する調査」を引きます。ただ、この数字は扱いに注意が必要です。

  • 公表は2019年3月。みずほ情報総研への委託調査です
  • 「79万人」は高位シナリオ、つまり労働生産性の上昇率が最も低く推移した場合の試算
  • 中位シナリオでは約45万人、低位シナリオでは約16万人

7年前の推計で、しかも一番厳しい前提の数字を切り出して「だから未経験でも入れる」と言うのは、さすがに無理があります。生成AIが実務に入る前の試算でもある。人手不足は事実。でも「人手不足=未経験でも採る」ではありません。足りていないのは主に、要件を決められる人と設計できる人です。

「やめとけ」と言われる4つの理由を、分解する

「やめとけ」は感情的なワードですが、中身を開けると割と具体的な4つに分かれます。それぞれ、本当に致命的なのかを見ていきます。

1. 給与ダウンが、単年では終わらない

未経験入社1年目の年収相場は、おおむね300万〜400万円と言われます。30代で現在500万〜600万円なら、いきなり150万〜250万円下がる計算。

問題は下げ幅より回収期間です。200万円下がって毎年50万円ずつ戻すとしても、元に並ぶまで4年、累計マイナスは数百万円。ここに住宅ローンや教育費が重なると、技術的な壁ではなく家計の理由で撤退することになる。

「やめとけ」と言う人の多くは、実はこの部分を言っています。適性の話ではなく、キャッシュフローの話。逆に言えば、貯蓄と固定費が耐えられる設計なら、この理由は無効化できます。

2. 学習コストは「量」ではなく「継続」で効いてくる

「1,000時間必要」といった数字がよく出ますが、僕が横で見ていて怖いと思ったのは、入社前の1,000時間ではなく入社後もそれが終わらないことのほうでした。

一緒に働いたエンジニアで伸びていった人は、例外なく業務時間外にも手を動かしていた。逆に「業務で必要な範囲だけやります」というスタンスの人は、3年経つと明確に差がついていました。これは残酷ですが事実です。20代なら時間で殴れる部分も、30代は家庭や体力の制約で同じようにはいきません。

3. 現場のギャップ:コードを書いている時間は、思ったより短い

これはマーケター側から見ていて、いちばん「イメージと違うだろうな」と感じた点です。DX推進のプロジェクトで一緒に動いていたエンジニアの1日は、仕様のすり合わせ、既存システムの調査、レビュー、障害の一次対応、他部署への説明——こうしたものがかなりの比重を占めていました。黙々とコードを書く時間は、想像よりずっと短い。

僕が担当していた、グループ各社の商品情報を統一するプロジェクトは2年半かけて頓挫しました。技術的に無理だったからではありません。関係部署の一部が協力しなかったからです。エンジニアリングは、想像以上に「人と組織」に殴られる仕事でもある。「人と関わらずに済みそう」という理由で選ぼうとしているなら、そこは修正したほうがいい。

4. 年齢:年下の上司は、ほぼ確定で発生する

30代未経験で入れば、上司も先輩も年下になる可能性が高い。これは避けられません。

僕自身は35歳で大手小売グループから大手保険会社に移っています。職種は変えていないので「未経験の30代」とは条件が違いますが、新しい環境で立ち上がる怖さは味わいました。その少し前、大手通信会社にいた頃には、コロナで在宅になって周りに気軽に聞けなくなり、仕事が回らず評価を落としたこともあります。あれは能力の問題ではなく、わからないことを聞ける関係を作れなかっただけでした。

30代未経験でエンジニアになるとき、この「聞ける関係を作れるか」は年齢が上がるほど難しくなる。プライドが邪魔をするからです。年下に基礎を聞ける人かどうかは、正直、プログラミングの適性より効きます。30代後半の転職全般の勘所は30代後半の転職は無理?35歳で年収860万→1200万にした方法にまとめました。

それでも成立する3つのケース

「やめとけ」が当てはまらない人もいます。共通しているのは、ゼロからではなく「何かを持ったまま」入っていることです。

ケース1:今の仕事の業務知識 × IT

これがいちばん強い。経理なら会計システム、物流なら在庫管理、保険なら査定業務、製造なら生産管理。業務を知っている人がその領域のシステムに関わると、初日から「聞かなくてもわかる」部分があります。

受け入れる側にいた実感として、技術は教えられても業務知識は教えるのに何年もかかる。30代未経験の武器は、技術の伸びしろではなく前職の土地勘です。「未経験ですが頑張ります」ではなく「この業務の非効率が何で、なぜシステムで解けると思うか」を語れる人は、書類の段階から扱いが変わります。

ケース2:社内SE・情シスから入る

IPAが2025年10月に公表した「DX動向2025」では、日本企業の85.1%がDXを推進する人材の不足を挙げています。しかも日本企業の特徴として、米国・ドイツと比べて社内人材の育成や既存人材の活用に頼る傾向が強いことが指摘されています。

これは案外重要な示唆を含んでいます。外から中途で採るより、中にいる人を移すほうが日本企業のデフォルトに近い。社外から未経験で入るドアより、社内から移るドアのほうが実は開いている、ということです。

ケース3:SIer・SES経由で「経験者」になる

賛否のある入口ですが、事実として未経験の受け口はここに集中しています。2〜3年で実務経験を積み、「経験者」のラベルを取ってから次に動く。そういう使い方をするなら合理的です。

ただし前提が2つ。ひとつは配属される案件が選べないこと。テストや運用監視だけで数年過ぎるリスクは現実にあります。もうひとつは、多重下請けの下層に入ると単価が抜かれて給与が上がりにくいこと。面接で「直請けの比率」「配属先の決まり方」を聞いて、答えが濁るなら候補から外していい。

現実的な3つのルート

ルート1:社内異動 → 経験者として転職【最短・最も過小評価されている】

ほとんどの記事が「スクールかエージェントか」の二択で書きますが、僕がいちばん勧めたいのはこれです。

社内の情シス、DX推進部、業務改革部門に手を挙げる。いきなり開発でなくてもいい。要件定義の補助、データ集計、ベンダーコントロール、業務フローの整理——ここから入って1〜2年で「システム側の経験」を職務経歴書に書ける状態にする。そのうえで転職市場に出れば、もう「未経験」ではありません。

僕が在籍していた大手小売グループのDX部門にも、グループ各社の現場から集まってきた人が何人もいました。前職の業務を知ったままIT側に回った人は、外から来た人より早く戦力になっていた印象があります。

デメリットは、異動の希望が通るとは限らないことと、時間がかかること。ただ、年収を落とさずに経験を積めるルートは、ほかにありません。

ルート2:学習+ポートフォリオで「手が動く未経験」になる

独学でもスクールでも構いません。重要なのは、面接で見せられる成果物があるかです。

チュートリアルをなぞっただけのTODOアプリは、正直あまり効きません。効くのは「自分の職場の困りごとを解いたもの」。在庫の突合を自動化した、集計作業を30分から3分にした——こういうものは、動くコード以上に「課題を定義できる人」という証明になります。前職の業務知識がそのまま効く場所でもある。

スクールについては誠実に書いておきます。スクールに行けば転職できる、という因果はありません。スクールが売っているのは学習の順番と、続けざるを得ない環境です。独学が3回続かなかった人が「他人との約束」を買うのは合理的だと思いますが、「お金を払ったから転職できる」ではない。転職保証の適用条件と、卒業生の転職先の職種内訳は、申し込む前に必ず確認してください。

ルート3:未経験可の求人から入る

インフラ・運用、テスト/品質保証、社内SEあたりが入口として現実的です。Web系の自社開発は人気が集中するので、30代未経験の競争率はかなり高い。

ここで効くのが、IT領域に詳しいエージェントの使い方です。未経験可の求人は玉石混交で、「未経験歓迎・研修充実」という文言だけでは中身が判断できません。エージェント経由なら、実際にどんな案件に配属されているかを事前に聞けます。選び方はITエンジニア転職に強い転職エージェントの選び方で整理しています。

僕自身、5回の転職で複数のエージェントを使ってきましたが、いちばん効いたのは担当者と毎週10分でも話し続けたことでした。連絡の頻度が落ちると、単純に紹介の優先順位から外れます。

学習コストは、国の制度で下げられる

未経験転職の最大のハードルが金銭面なら、そこは制度で削れます。

制度内容
一般教育訓練給付受講費用の20%(上限10万円)
専門実践教育訓練給付50%(年間上限40万円)、修了後1年以内の就職で70%、さらに賃金5%以上アップで最大80%(年間上限64万円)
教育訓練休暇給付金(2025年10月創設)30日以上の無給の学び直し休暇を取得した場合、賃金の5〜8割を最大150日

プログラミング系の講座は、経済産業大臣認定の「第四次産業革命スキル習得講座(Reスキル講座)」に指定されていれば専門実践の対象になり得ます。50万円の講座が実質10万円台まで下がるなら、判断は変わるはずです。

注意点も。指定はスクール単位ではなく講座・コース単位で、同じスクールでも対象外のコースが混ざっています。厚生労働省の教育訓練講座検索システムで、申し込む予定のコース名そのもので確認してください。支給は後払いなので、受講料はいったん全額立て替えることになります。対象講座の比較は給付金対象のプログラミングスクール比較にまとめました。

2025年10月に始まった教育訓練休暇給付金は、まだあまり知られていません。在職のまま無給で休んで学ぶ人の生活費を支える制度なので、「辞めてから学ぶ」よりリスクがかなり低い。勤務先の承認は要りますが、頭に入れておく価値はあります。

やってはいけない準備

最後に、遠回りになりやすいパターンを挙げます。

1. 資格から入る 基本情報技術者やCCNAは無駄ではありませんが、資格だけでは「手が動く」証明になりません。学習のペースメーカーとして使うのはいいけれど、資格取得を転職開始の条件にすると半年〜1年を消費します。

2. 学習言語の比較に時間を溶かす 「Python か JavaScript か」で1ヶ月悩む人がいます。求人が多い言語を1つ選んで着手するほうが、確実に前に進みます。

3. 会社を辞めてから考える 在職中に応募するのと、無職で応募するのとでは、面接での立場がまるで違います。焦りは相手に伝わるし、給付金制度の多くも在職中のほうが使いやすい設計です。

4. 「未経験歓迎・研修充実」を額面通りに受け取る 大量採用型の企業ほどこの文言を使います。研修の中身、配属の決まり方、直請け比率——ここを聞いて答えられない会社は避けていい。

5. 前職の経験を「関係ないもの」として捨てる 30代未経験の面接で最も痛いのが、職務経歴書を白紙同然にしてしまうことです。前職の業務知識こそが、20代の未経験者に対する唯一の優位性になります。


30代未経験のエンジニア転職は、「やめとけ」でも「誰でもなれる」でもありません。入口が絞られ、選ばれる条件がはっきりしてきた、というだけです。

数字が示しているのは、需要が消えていないことと、その需要が「業務を理解していて、手も動く人」に集中していること。だとすれば、いまの業務知識を捨てて0から始めるより、それを持ったままIT側に半歩ずらすほうが勝率は高い。

僕は転職を5回して、変わったのは職種ではなく居場所でした。飛ぶ距離を短くするほど、着地の確率は上がります。

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デジタルマーケティング歴10年。5社の転職で年収3.5倍を実現。 「出世しなくても環境を変えるだけで年収は上がる」をテーマに発信中。