「会計ソフトは必要らしい。でも、できるだけ安く済ませたい。というか、無料のやつでどこまでいけるの?」
開業したての個人事業主や、副業の確定申告が初めての会社員から、この質問は本当によく飛んできます。比較記事を開くと「月額980円から」「永久無料」といった言葉が並ぶのに、いざ申し込もうとすると条件が細かくて、結局どれが一番安いのか分からなくなる。そういう相談ですね。
僕は会社員をやりながら副業収入があり、毎年自分で確定申告をしています。ただ、この記事で扱う全プランを契約したわけではありません。書いているのは、2026年8月時点で各社の公式料金ページとサポートFAQを一つずつ突き合わせて確認した内容です。「月額表示」と「年額総額」がすり替わっていたり、無料プランの制限が比較表の脚注に隠れていたり──価格の見え方には、けっこうカラクリがありました。
ソフトそのものの選び方は会計ソフトの選び方で整理しているので、ここでは徹底的に「価格」に絞ります。なお税務はYMYL領域です。控除の適用可否や申告義務といった個別の税務判断は、必ず税務署や税理士に確認してください。
結論|条件別の最安解【2026年8月時点】
先に答えを置きます。「一番安い会計ソフト」は一つに決まりません。申告形態と年数で入れ替わります。
| あなたの状況 | 最安の選択肢 | 費用(税抜) |
|---|---|---|
| 白色申告のままでいい | やよいの白色申告オンライン フリープラン | 永年0円 |
| 青色申告の1年目 | やよいの青色申告オンライン セルフ/ベーシック | 初年度0円 |
| 青色申告の2年目以降・消費税申告なし | マネーフォワード クラウド確定申告 パーソナルミニ | 年10,800円 |
| 青色申告の2年目以降・消費税申告あり | やよいの青色申告オンライン セルフ | 年11,800円 |
| とにかく手元にお金がない・帳簿だけ付けたい | フリーウェイ経理Lite 無料版 | 0円(申告書は作れない) |
意外に思われるのが4行目でしょうか。インボイス登録をして消費税申告が必要になると、最安の座はマネーフォワードから弥生に移ります。弥生は全プランで消費税申告に対応しているのに対し、マネーフォワードはパーソナル(年15,360円)以上、freeeはスタンダード(年23,760円)以上でないと消費税申告ができないからです。ここは見落とされがちなので、あとで詳しく書きます。
※料金・キャンペーンはすべて2026年8月時点で各公式サイトを確認したものです。変更される可能性があるため、申込前に公式サイトで最新情報をご確認ください。
無料でどこまでできるのか|限界を一覧にする
「無料」とうたわれているものにも、まったく性質の違うものが混ざっています。並べてみると差が一目瞭然でした。
| 無料の種類 | 確定申告書の作成 | 青色申告決算書 | 仕訳数の上限 | 口座・カード連携 | サポート | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| やよいの白色申告オンライン フリープラン | 永年無料 | ○(収支内訳書も) | ―(白色専用) | 上限なし | ○ | WebFAQのみ |
| マネーフォワード 無料プラン | 永年無料 | △(雑所得・控除のみ) | × | 年50件 | ○ | メール・チャット |
| フリーウェイ経理Lite 無料版 | 永年無料 | × | × | 上限なし | ×(自動仕訳なし) | FAQ・マニュアルのみ |
| やよいの青色申告オンライン セルフ/ベーシック | 初年度無料 | ○ | ○ | 上限なし | ○ | プランによる |
| freee会計 | 30日間お試し | ○ | ○ | 上限なし | ○ | ○ |
| マネーフォワード(有料プラン) | 1ヶ月トライアル | ○ | ○ | 上限なし | ○ | ○ |
この表でいちばん言いたいのは、「永年無料」で青色申告決算書まで出せるものが、やよいの白色申告オンライン以外にほぼ存在しないという事実です。しかも白色申告オンラインは白色専用なので、青色申告決算書は端から対象外。つまり「無料で青色申告を完結させる」は、2026年8月時点だと現実的な選択肢がありません。
マネーフォワードの無料プランは特に誤解されやすい部分です。プラン名に「無料」とあるので確定申告まで使えそうに見えますが、公式のプラン比較表を読むと仕訳の登録が1会計年度あたり50件まで、青色申告決算書は作成不可。証憑の添付やAI-OCRも使えません。事業の帳簿としては、月5件の取引でも半年で枠が尽きる計算になります。実質的には「触ってみる用」と考えたほうがいいですね。
フリーウェイ経理Liteは「永久無料」で有名ですが、無料版には青色申告機能も白色申告機能もありません。銀行・カードの自動仕訳も対象外で、手入力が前提。Windows専用でMacでは動かない点も含め、想定されている使い方がクラウド3強とはだいぶ違います。決算書や総勘定元帳の出力はできるので、「帳簿は自分で作るから、申告書は国税庁の確定申告書等作成コーナーで打つ」という人向けの道具、という位置づけが正確でしょう。
なお、比較記事でよく「永久無料」と紹介される円簿会計・円簿青色申告は、2026年8月時点の公式ページだと「初年度無料」「一般無料版」と表記が揺れていて、無料枠がどこまで続くのか読み取れませんでした。使うなら公式で直接確認してからにしてください。
一方、やよいの白色申告オンラインのフリープランは、調べた限りかなり潔い設計です。プランによる機能差がなく、収支内訳書・確定申告書の作成、e-Tax、口座連携、スマホアプリ、インボイス・電子帳簿保存法対応まで全部0円。違うのはサポート範囲だけで、フリープランはWebFAQのみになります(ベーシックは通常11,500円/年で電話・メール・チャット、トータルは通常21,000円/年で業務相談まで)。制約は「3年間ログインしないと使えなくなる」という点くらい。白色申告で済ませるなら、ここに費用をかける理由は正直あまり見当たりません。
「安い」を年額総額で比べる|月額表示のカラクリ
ここからが有料プランの話です。価格比較でいちばん罠が多いのが、この月額表示。
各社が大きく打ち出している「980円/月」「900円/月」は、年払いを選んだ場合の月あたり換算です。月払いを選ぶと金額が跳ね上がります。2026年8月時点の公式料金を、年額総額に直して並べます(すべて税抜)。
| プラン | 年払いの年額総額 | 月払いを12ヶ月続けた場合 | 差額 |
|---|---|---|---|
| マネーフォワード パーソナルミニ | 10,800円(900円/月) | 15,360円(1,280円/月) | 4,560円 |
| freee スターター | 11,760円(980円/月) | 21,360円(1,780円/月) | 9,600円 |
| やよいの青色申告 セルフ | 11,800円(年額のみ) | ― | ― |
| マネーフォワード パーソナル | 15,360円(1,280円/月) | 20,160円(1,680円/月) | 4,800円 |
| やよいの青色申告 ベーシック | 22,800円(年額のみ) | ― | ― |
| freee スタンダード | 23,760円(1,980円/月) | 35,760円(2,980円/月) | 12,000円 |
| マネーフォワード パーソナルプラス | 35,760円(年払いのみ) | ― | ― |
| freee プレミアム | 39,800円(年払いのみ) | ― | ― |
freeeの差が大きいのが分かると思います。スタンダードを月払いで1年使うと35,760円。年払い(23,760円)との差は12,000円で、1.5倍です。「確定申告の時期だけ2ヶ月契約すれば安上がりでは」と考える人がときどきいますが、帳簿は1年分必要なので、直前2ヶ月に1年分の取引をまとめて入力することになります。それは安さと引き換えに地獄を買う行為なので、素直に年払いにしたほうがいい。
もうひとつ。表示価格はどこも税抜です。実際の請求は1.1倍になるので、たとえばマネーフォワード パーソナルミニは年11,880円、freeeスターターは年12,936円、やよいの青色申告セルフは年12,980円。エントリー同士の実質的な差は年1,000円程度しかありません。エントリープランの範囲で足りるなら、価格は決め手にならないというのが正直なところです。この帯で迷っているなら、価格ではなく操作性で選ぶほうが合理的で、その判断軸はfreeeとマネーフォワードの比較に書きました。
2年目以降の最安は「消費税申告の有無」でひっくり返る
価格差がはっきり出るのは、むしろ消費税申告が必要になったときです。
インボイス登録をして課税事業者になると、消費税の申告が加わります。ここで各社の下限プランを並べると、こうなります。
- ▸やよいの青色申告オンライン セルフ:11,800円(全プランで消費税申告に対応)
- ▸マネーフォワード パーソナル:15,360円(ミニは消費税申告に非対応)
- ▸freee スタンダード:23,760円(スターターは消費税申告に非対応)
弥生とfreeeの差は年11,960円。倍以上です。弥生が「プランによる機能差をつけず、サポート範囲だけで料金を分ける」設計を採っているおかげで、消費税申告が必要な層にとっては最安になる、という構図ですね。免税事業者のままなら、この差はまったく発生しません。
だから2年目以降の最安を考えるときは、「今の自分」ではなく「来年の自分」で計算したほうがいい。インボイス登録を検討しているなら、登録後に必要なプランの金額で比べておくと、初年度無料が切れたあとで慌てずに済みます。
無料ソフトを選んで後悔する4つのケース
安さは正義ですが、無料には無料の理由があります。調べていて「これは事前に知っておかないとまずいな」と感じたポイントを4つ。
ひとつ目は、青色申告特別控除を取りこぼすケース。 白色のまま無料ソフトで済ませ続けると、最大65万円の特別控除(2027年分からは要件を満たせば最大75万円へ引き上げ予定)を丸ごと捨てることになります。仮に所得税・住民税の合計税率が20%なら、65万円控除の効果は13万円前後。年1万円台のソフト代を惜しんで13万円を見送るのは、計算が合いません。売上が育ってきたら、無料へのこだわりはいったん脇に置いたほうがいいと思います。
ふたつ目は、サポートに聞けないケース。 無料系はほぼ例外なくWebFAQのみです。日々の記帳で困る場面より、申告直前に「この処理どうすれば」と詰まる場面のほうが痛い。1月〜3月に一人で調べ物をする時間を時給換算すると、弥生のベーシックプラン(白色11,500円/青色22,800円)で電話サポートを買うほうが安く付く人はけっこういるはずです。
三つ目は、インボイス・電子帳簿保存法まわりの対応。 クラウド3強とやよいの白色申告オンラインは標準対応していますが、インストール型の無料ソフトは製品ごとに事情が違います。フリーウェイ経理Liteはインボイス制度への追加費用なし対応をうたう一方、電子帳簿保存法への対応は公式に明記がありませんでした。電子取引データの保存はインボイス登録の有無にかかわらず全事業者が対象なので、ここを仕組みで担保できるかは見ておきたいところ。
四つ目が、データ移行のコスト。 これがいちばん見落とされます。無料ソフトで1年やってみて、合わないから有料へ、となったときに待っているのが勘定科目の対応付けと口座連携の再設定、自動仕訳ルールの作り直しです。会計ソフトは乗り換えコストが高いタイプのサービスで、「とりあえず無料で始めて、ダメなら移ればいい」という発想と相性が良くありません。無料で始めるなら、そのまま続けられる無料(=やよいの白色申告オンライン)か、そのまま有料に移行できる無料(=やよいの青色申告オンラインの初年度無料)を選ぶのが安全です。
2年目以降を見据えた、コスト最適な選び方
以上を踏まえた、僕なりの整理です。
白色申告で当面いく人は、やよいの白色申告オンラインのフリープランで確定。0円で全機能が使えて、しかも将来やよいの青色申告オンラインへ移るときは同じ弥生アカウント内での移行になります。無料の出口として最も詰まりにくい。副業を始めたばかりで、まず申告の流れを知りたいという段階なら、副業の確定申告ガイドと併読すると全体像がつかめます。
青色申告に踏み込む人は、やよいの青色申告オンラインの初年度無料キャンペーン(2027年3月15日申込分まで)が現状いちばん強い。セルフもベーシックも初年度0円で、両者の違いはサポートだけです。ここで悩む必要はほぼなくて、電話で聞きたいならベーシックを選んでおけばいい。どちらも初年度は0円なので、初年度に限れば上位を選ばない理由がありません。2年目にセルフへ落とせば11,800円です。
すでにfreeeやマネーフォワードを使っていて、料金だけ気になっている人は、乗り換えを急がないほうがいいと思います。エントリープラン同士の年間差は1,000円前後。その1,000円のために、口座連携と自動仕訳ルールを作り直す休日を1日使うのは割に合いません。差額が意味を持つのは、消費税申告が必要になってfreeeのスタンダード(23,760円)が視野に入ったときくらいです。
最後に、支出の見え方の話を。会計ソフト代は事業の必要経費です。年12,000円なら、税率20%として実質9,600円ほどの負担(経費算入の可否は個別判断なので、税務署・税理士へご確認を)。「毎月1,000円の出費」と見ると重いけれど、浮く時間まで含めれば印象は変わります。副業の記録を残す習慣が後で効いてくる話は、確定申告の基本でも触れました。
まとめ
2026年8月時点の公式情報をもとに、価格の観点で整理しました。
- ▸白色申告ならやよいの白色申告オンライン フリープランが永年0円。全機能が使え、制約はサポートがWebFAQのみという点だけ
- ▸青色申告の1年目はやよいの青色申告オンラインの初年度無料が最有力。セルフもベーシックも0円なので、初年度はサポートの厚いベーシックで問題ない
- ▸「永年無料で青色申告決算書まで」は現実的に存在しない。マネーフォワード無料プランは年50件・決算書不可、フリーウェイ経理Liteは申告機能そのものがない
- ▸月額表示は年払い前提。freeeスタンダードは月払いだと年12,000円も高くつく。年額総額で比べること
- ▸2年目以降の最安は条件次第。消費税申告なしならマネーフォワード パーソナルミニ(10,800円)、ありならやよいの青色申告セルフ(11,800円)
- ▸エントリー帯の価格差は年1,000円程度。ここでは価格より操作性で選ぶほうが合理的
安く済ませることと、安物買いの銭失いは紙一重です。特に青色申告特別控除を取りこぼすパターンは、ソフト代の10倍以上の損になり得ます。全体の選び方は会計ソフトの選び方に、2強の直接比較はfreeeとマネーフォワードの比較にまとめているので、価格の目星がついたらそちらもどうぞ。そして繰り返しになりますが、控除の適用や経費の判断といった税務の最終確認は、税務署・税理士へ。
